2009年1月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

防衛大綱の見直し

派兵強化は平和の流れの障害


 麻生太郎首相は九日、財界人や元官僚などからなる「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長は勝俣恒久東京電力会長)を開き、二〇〇四年十二月に政府が決定した現行「防衛計画の大綱」を見直す作業に着手しました。

 懇談会は夏までには報告をまとめ、これを受けて政府は修正・大綱を年末に決定する構えです。大綱を見直すのは、日米安保条約=軍事同盟をより侵略的に強化し、アメリカいいなりに強行してきた海外派兵を文字通り「防衛」政策の根幹にすえるのが狙いです。日本を海外で戦争する国に変える作業を見過ごしにはできません。

海外派兵態勢の強化

 麻生首相は懇談会で、「諸事情を踏まえると、見直しをする時期にきています」とのべました。その説明の最初にあげたのが、「国際平和協力業務」を自衛隊の「本来任務」にしたことや「イラクやインド洋での実績を積んできた」ということです。海外派兵の本格的強化をはかろうとする首相の意識を反映しています。

 首相がいう「今後の国際情勢を見通し」た「安全保障戦略と防衛力の役割」が、イラク派兵を一般化し、海外派兵の強化を日本の「防衛」政策の中心にすえることを狙ったものであるのは明らかです。

 イラク戦争が示したのは、アメリカの一国覇権主義と先制攻撃戦略にもとづく無法な戦争は、世界ではもはや通用しないという冷厳な事実です。米軍が二年後にイラクから撤退せざるをえなくなったのも、航空自衛隊が撤退に追い込まれたのも、軍事的覇権主義が破綻(はたん)したからです。

 確定判決にもなった名古屋高裁判決(昨年四月)も自衛隊のイラク派兵が憲法違反であると断じました。政府は海外派兵強化の路線を突き進むべきではありません。戦争を放棄した憲法をもつ日本が、世界に広がる平和の流れを阻む役割を果たすなど言語道断です。

 問題は麻生首相の卑屈な対米追随姿勢です。昨年十一月のオバマ次期大統領との電話会談では、「日米同盟の強化が日本外交の第一原則」だとすすんで申し出ました。今回はオバマ大統領就任の前に海外派兵強化方針を誇示して見せました。みずから日米同盟強化を売り込むのは、アメリカの心証をよくしたいからだといわれても仕方がありません。こんな卑屈な態度では、激動する世界情勢に対応できないのは当然です。

 世界は大きく変化しています。長く自民党政治の「司令塔」として君臨してきたアメリカでさえ、軍事でも経済でも大きな破綻に直面し、一国覇権主義は終焉(しゅうえん)に向かい始めています。そんなときに、外交でも経済でも自前の戦略を何一つもたず、アメリカいいなりの姿勢に固執するのでは、平和日本の未来を開くことができるはずはありません。

安保廃棄の議論を

 政府が海外派兵態勢の強化や米軍再編の加速、宇宙の軍事利用の推進や武器輸出三原則の緩和をめざすのは、日米安保条約にしばられているからです。しかし、日米軍事同盟の強化がもたらす痛みをいつまでも国民が我慢する理由はありません。

 日米安保条約を廃棄し、アメリカとの真の対等・平等の関係を築く議論を大いにすすめることが、いよいよ重要になっています。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp