2009年1月19日(月)「しんぶん赤旗」
地デジ移行、アナログ打ち切り
実現メドたたず
計画の無謀さ反映
新年になって、民放テレビの右肩にも「アナログ」の文字。お気づきでしょうか。二〇一一年七月二十四日に地上デジタル放送へ移行まで、あと九百日あまり。地デジ対応テレビに買い替えなければ、テレビを見られなくなる―。政府、業界あげて宣伝していますが、地デジ対応テレビの普及は全世帯の半分にも達していません。不況が追い打ちをかける中、「このままでいいのか地デジ移行計画」の声が広がっています。
「一一年の(地デジ移行)実現にめどが立った状況ではないと認識すべきだ」
十六日、総務省の審議会「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」で、地デジ普及の現状を報告したデジタル放送推進協会(Dpa=総務省や放送、家電業界でつくる社団法人)の浜口哲夫理事は、危機感をあらわにしました。
政府は一一年までに、地デジテレビやチューナーなど受信機の「一億台の普及」「世帯普及率100%」を目標に掲げてきました。昨年八月の“北京五輪特需”で世帯普及率50%を目指しました。
ところが、五輪後の調査では46・9%と、目標から大きく後退。さらに不況の影響で、薄型テレビの売り上げが伸び悩みます。今年に入って、シャープやパナソニックはじめ家電メーカーは、テレビ生産計画の見直しを相次いで発表しました。
放送局も苦境に立たされています。日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長は十五日の記者会見で、民放連に加盟するテレビ・ラジオ局(百九十四社)の約半数が、〇八年度の中間決算で経常赤字になったと語りました。
主な原因は、地デジへの投資です。民放全局で一兆四百四十億円にものぼります。山間部や離島に地デジ中継局を整備しなければならない地方局の負担は平均で五十四億円。「民放連五十八年の歴史で最悪に近い数字」と広瀬会長は言います。
昨年十二月一日、東京都内で開かれた「デジタル放送の日」記念式典で、鳩山邦夫総務相は「(地デジ移行が)万が一延期となった場合、国が支援する」と本音を漏らしました。
地デジ推進に責任を負う大臣や団体幹部が、公式の場で「延期」「間に合わない」と口にするのは、これまでなかったこと。一一年アナログ打ち切り計画の無謀さと矛盾が一気に噴き出しています。