2009年1月11日(日)「しんぶん赤旗」
主張
核兵器廃絶
保有国に決断迫るときだ
核兵器廃絶をめぐる世界の議論がここ数年来大きな変化をみせています。全面禁止・廃絶を明確な目標とする主張が核兵器保有国やその同盟国の政府関係者らにも広がり、国際政治の現実課題として取り組む機運が広がっています。
日本と世界の草の根の運動と、非同盟諸国運動やニュージーランドなど七カ国による「新アジェンダ連合」など政府レベルの活動はさらに力強い流れになっています。二〇一〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向け、核保有国に決断を迫ろうとしています。
廃絶めざす議論の前進
流れの変化を浮き彫りにしたのが、歴代米政権で核戦略策定にあたった経験を持つキッシンジャー、シュルツ、ペリー、ナンの四氏が〇七、〇八年の二度にわたって発表した「核兵器のない世界」の提言でした。廃絶を明確に掲げることが、脅威に対処する「国際的な信頼と幅広い協力」を得る「唯一の道」だと指摘しています。
昨年十二月にパリで旗揚げされた「グローバル・ゼロ」の運動は、核兵器廃絶をめざす議論がさらに前進していることを示しました。核兵器廃絶協定の締結を「期限を切って」めざすと宣言しているからです。カーター元米大統領、ゴルバチョフ元ソ連大統領ら百人を超える政治家や外交官、ノーベル平和賞受賞者らが賛同しています。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長も十月、核兵器保有国がNPT上の核軍縮義務を果たすよう求め、核兵器禁止条約に言及しています。
米英の主要シンクタンクにも、核兵器削減や兵器用核分裂性物質の生産禁止(カットオフ)条約など従来は核兵器保有を前提にしていた部分的な核軍縮措置を、「核兵器のない世界」を実現するうえで必要な具体措置として議論しなおす動きが出ています。
NPTは核保有五カ国に核兵器の独占を認め、それ以外の保有を禁止しています。しかし、核兵器に反対する世論と非核を誓約した圧倒的多数の国の圧力の前に、二〇〇〇年の同会議では、核保有国も廃絶を達成する「明確な約束」に合意せざるをえませんでした。
こうした流れを、核兵器拡散阻止や対テロを口実に先制攻撃戦略をとり核兵器を支柱の一つとしたブッシュ米政権が逆転させました。そのような政策こそ、拡散の危険を強めていることを、キッシンジャー氏らの提言も認めています。
ブッシュ政権はイラク戦争の失敗で内外の厳しい批判にあい、その一国覇権主義は劇的な破たんを示しています。そのなかでまもなく就任するオバマ米次期大統領は、核兵器廃絶の目標を米国の核政策の「中心的要素」にすると述べています。
草の根の運動の高まりを
核兵器廃絶の国際合意を再確認し、実行を迫るときです。オバマ政権に公約を守らせ、日本政府に唯一の被爆国にふさわしい行動をとらせ、NPT再検討会議を廃絶への確かな一歩にするため、世論をさらに強めることが重要です。
核固執勢力は依然として強く、巻き返しも起きています。そのなかで成り行きを左右するのは草の根の運動です。被爆者の高齢化が進む中、悲願の核兵器廃絶を実現するため、NPT再検討会議に向けて取り組まれている「核兵器のない世界を」の署名が重要性を増しています。
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