2009年1月5日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

つどう つながる

2009 各分野のリーダーにきく


 青年がほんとうに大切にされる日本をめざして、2009年を飛躍の年に―。昨年、青年の雇用と権利を守るたたかいや、憲法を守る運動などさまざまな分野で青年たちの活躍がめだち、政治や社会を動かしました。その先頭に立ってきた3人に、昨年を振り返り新年の抱負を語ってもらいました。(平井真帆、染矢ゆう子)


平和・9条 語り合う場もっと

ピースナイトナインの事務局を務めた

岩崎明日香さん(22)

 昨年の12月に開かれた憲法を守る学生の大集会「第2回 ピースナイトナイン」には、1000人の若者が集まりました。

 憲法をめぐる情勢では、07年の秋、「自分の任期中に憲法を変える」と宣言していた安倍政権が倒れ、第1回の集会も大成功。「イラクへの自衛隊派兵は違憲」との判決が名古屋高裁で出るなど、よい方向に向かってきていると思います。

 そうした変化の中、2回目の集会準備の過程では、「今憲法が変えられようとしているから、学生が動かなければ!」という訴えでは、学生の思いにかみ合わないな、と感じるようになりました。

 集会に向けた事務局会議も一時中断。「このままで本当に集会ができるのか」という危機感から、みんなに「なぜ9条を守りたいのか」という思いを話してもらいました。

 すると、バラバラだったみんなの中に、強い信頼関係が生まれました。「何でも話していいんだ」という安心感ができ、悩みが交流できるようになりました。

 私たちは中学・高校の思春期に「イラク戦争のぼっ発」をテレビで見て育った世代です。

 目の前で始まった戦争。それに対して、「自分は何もできないのだろうか? 何かしたい」という思いが、みんなの共通した原点だと気がつきました。

 そんな学生の率直な思いに合うような企画にしようと、2回目の集会のテーマは、「世界の窮状に9条!」と、決めました。

 今の学生はバイトや就職活動で大変です。私自身、大学院進学の学費をためるため、バイト漬けだったときは、とても社会のことなど考える余裕はありませんでした。

 ですから、「人が集まらない。みんな、平和のことなんて考えていないんだ」と嘆いても始まりません。

 学生の置かれている現状をよく理解し、「どういう形ならかかわってもらえるのか」―その工夫に力を注ぐことが大切だと思いました。

 今年は、学生がもっと気軽に、そして継続的に憲法について語ったり考えたりできる“場”をつくっていけたらいいですね。

「派遣切り」 苦しみに心寄せて

首都圏青年ユニオン書記長

河添 誠さん(44)

 昨年は、10・5全国青年大集会が4600人の参加で成功しました。

 一昨年の3300人の1・5倍です。集会を準備する過程で、地方で集会が開かれました。各地で青年ユニオンがうまれ、青年の労組加入が相次ぎました。集会の後も報告会に福岡で200人が集まるなど力強くたたかいがすすんでいます。

 集会では、幅広い人があいさつし、中身でも広がりをもつことができました。

 昨年は、反貧困ネットワークの運動も大きく広がりました。貧困の当事者が声を上げることを大事にし、社会を揺らしています。

 困っている当事者をおいてきぼりにしない運動が世の中を変えます。要求に徹底してよりそい、具体的に問題を解決するとともに、なぜ、当事者がそうした状態にあるのかを知ることが必要です。

 「派遣切り」が大問題になっています。これまでも派遣契約の中途解除はあり、派遣労働者は日本中の工場を転々とさせられてきました。派遣会社が紹介する次の派遣先に移る理由はお金がないからです。派遣会社の寮は、敷金礼金や電化製品などの初期費用がかかりません。しかし、寮費や家具のレンタル代などが給与から天引きされ、お金はたまりません。

 貧困だから寮に入っている労働者に、景気のよいときは長時間働かせてぼろもうけしてきたのが大企業です。減産になれば、失業して家も失うというのは、派遣法そのものの問題です。

 苦しんでいる仲間の声を聞き、自分の生きづらさは、ほかの人にも共通している社会的問題なのだと目が開いていく回路ができはじめています。そういう場や運動をふやし、かかわりをもつことで生きやすい状況に変えていけると思います。

 いろいろな人の苦しみ、悩みを聞き、共感してつながっていくことが、社会を変えていくために必要だと思います。

自己責任論 乗り越える居場所に

日本民主青年同盟委員長

田中 悠さん(27)

 2008年は、世の中が大きく動いた1年でした。

 10月5日の全国青年大集会をはじめ、全国で青年が「人間らしく働きたい」と立ち上がり、日本共産党の志位和夫委員長の国会質問がネットで反響を呼びました。学費免除制度もいくつかの大学で広がりました。

 日本民主青年同盟は07年の33回大会で、「青年が政治をうごかす新しい時代のはじまり」と決議しましたが、願いを実現するためにたたかってきたことが、政治を動かしてきたと思います。

 社会の変化と同時に、青年自身や民青同盟も変わってきていると思います。

 自分が苦しんでいることが、自分だけの問題ではなく、「今の社会、何かがおかしい。このままでいいのか」と、多くの青年が気づき始めています。

 青年は友人との間で自分の生き方や社会についてどう思うかなど、真剣な話をするのが苦手だという人も少なくありません。けれど、青年は話したくないわけではありません。

 競争的な評価の中で育ち、財界などが振りまく、「若者はすぐやめて根性がない。がまんする力が足りない」といった自己責任論を、小さいころからずっと、言われ続けてきているのです。

 自己責任論に苦しめられている「自分の目の前の若者」に、何を語ったらいいのか、何ができるのかを考えることが青年とつながる上でとても大事です。

 自分の苦しみを話すことで相手も思いを語り、「苦しんでいるのは自分だけじゃない」と気づくことが、「連帯」の出発点だと思います。

 民青同盟がそうした青年の居場所になっています。ただ単に自分の思いを話せる「逃げる場所」ではなく、そこから前向きなエネルギーが生まれ、たたかいが始まる場所です。

 昨年、前進の足がかりをつかんだとはいえ、「派遣切り」や「内定取り消し」など、青年の苦しみに新たな局面が生まれています。

 今年は民青同盟が、そういう青年ともつながって、もっと大きな組織に成長していきたいと思います。


お悩みHunter

進学の負担 申し訳なくて…

  中学3年の女子です。会社の倒産で父が失業しました。私は、自由な校風が気に入って、ある私立高校への進学を考えていました。父や母は大丈夫と言ってくれますが、家族に経済的な負担をかけるのは、申し訳なくて…。父はまじめに働いてきたのに、どうしてこんなことになるの?(15歳女性)

両親と相談しプランを立てて

  ごめんね、こんな心配をかけて―。私も謝りたい気分にさせられます。

 本当にいきなりの失業、お父さんはどんなにつらかったことでしょう。みんなまじめに働いているのに、「雇い止め」とか「派遣切り」だとか、本当にひどい。なんて人間を大切にできない社会になったのでしょうか。私も怒りでいっぱいです。

 高校進学のこと、結論から言うと、ご両親のアドバイス通り、自由な校風が気に入っているというその私学に進んではいかがでしょうか。とはいえ、家のことを考えると、あなたが心配になる気持ちもよくわかります。まずは進学したい学校や住んでいる都道府県の教育庁に問い合わせて、奨学金制度などについて調べてみてはどうでしょうか。その上でご両親とも相談し、進学に向けた具体的なプランを立ててみましょう。

 経済面は知恵を絞れば何とかなるものです。それよりも大切なのは、目的の高校への進学意欲です。自分が好きで選んだ高校なら、ヤル気だけでなく、困難を突破しようとする気迫が違ってきます。苦労もやりがいに転化するというもの。

 同時に、こんな苦労を高校生に強いる日本の国や社会、政治はどうなっているのか。問題の本質や背景、打開への展望をしっかりつかむ学習意欲も出てくるのではないでしょうか。たくましく歩まれることを心から期待し、応援しています。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。



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