2009年1月3日(土)「しんぶん赤旗」
フレッシュ座談会
市田書記局長、青年候補と語る
変えよう 思い ピタッ
気合一発 総選挙の年
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出席者(写真左から順に)
中野たけし 34歳(比例東海候補、三重2区重複)
佐伯めぐみ 28歳(比例北陸信越候補、富山1区重複)
市田忠義書記局長
せと 雄也 30歳(比例九州・沖縄候補、佐賀3区重複)
池内さおり 26歳(東京12区候補)
市田 あけましておめでとうございます。
解散含みで通常国会が五日から始まるという緊迫した状況のもとで新年を迎えました。麻生内閣の支持率が急落していますが、自民党政治そのものが“賞味期限切れ”を迎え、末期的状況にあることの象徴的あらわれだと思います。小泉「構造改革」で雇用も社会保障も破壊し、国民生活を深刻な状況に陥れながら、それへの反省もなく、相変わらずの大企業、アメリカいいなりで、打開策を示せない―にっちもさっちもいかないところに追い込まれているのがいまの現状だと思います。
いま、自公政治は許せないという声が広がる一方、“解散のためなら”と党略的な国会対応に終始する民主党にもうさんくささを感じている有権者が多くいる。そのなかで、大企業優先、アメリカいいなりという「二つの政治悪」にメスを入れてこそ国民の切実な要求が実現できるという立場で論戦、草の根のたたかいをすすめる日本共産党に対し多くの人々のなかに“共産党の主張に一回耳を傾けてみよう”という雰囲気が広がっているのが特徴だと思います。
とくに、雇用問題などで実態が深刻な若い世代の中で日本共産党への期待が広がっているのが昨年一年間の大きな特徴でした。若い候補者のみなさんは、どのように感じていらっしゃいますか。
表情和む「あなたのせいじゃない」
働き方
せと 「蟹工船」がブームですが、本だけでなく、漫画雑誌で連載されたんですね。若者に聞くとみんな「知ってる」というんです。描かれている実態を自らと重ね合わせると同時に、根底にあるヒューマニズム、連帯感が若い世代に受け止められていると思います。佐賀で青年たちが開いた「蟹工船」上映と「しゃべり場」の集いで、派遣労働のある青年は、「上手に仕事ができないと道具を投げつけられた。体に当たり、会社に言っても話を聞いてもらえなかった。こんな会社を変えなければいけない」と話していました。
佐伯 青年が連帯を求めているのは私も感じます。アパートをずっと訪ねていたとき、大企業に派遣で働いている二十一歳の青年と出会いました。鹿児島から富山に希望をもって出てきたのに、仕事が減ったからと派遣会社から自宅待機を命じられた。故郷に帰ることもできず、この二カ月アパートで引きこもりのような状態でいたんです。その彼に労働法制が改悪されて派遣労働がどんどん増えていること、“あなたのせいじゃない”と話すと表情が和むんです。「自己責任論」で追い詰められていたんですね。
もう一人、派遣で働いていた三十七歳の男性が、職場でけがをして労災にしてほしいと上司にいっても「お金がほしいだけだろ」と言われた。それがショックで「自分は会社にも世の中にも必要とされていない」と追い込まれ、十一月の日本海に身を投げたんです。でも死に切れなくて、いろんな経緯があって共産党にたどりついて相談をして救われた。入党もしたんですが、何をやりたいかと聞くと「人の役に立ちたい。働く人たちを守る法律があることすら知らない労働者に、今度は自分が知らせていきたい」といっていました。この方もインターネットで派遣問題を追及した志位和夫委員長の動画を見て、共産党に注目していたそうです。
政治が原因
池内 あるとき、私の演説を二人の青年がずっと聞いていたんです。終わってあいさつにいくと、「ぼくたちも日雇い派遣です。政治と自分の働き方が関係していることを初めて知った。政治が原因で自分たち(のような働かされ方)が生まれていることがわかった」というんですね。そして「政治を変えるためにがんばってください」といわれた。雇用を守る共産党が若者に新鮮に受けとめられているのをうれしく思いました。
中野 三重でも県委員会に知らない若い夫婦が一万円のカンパを持ってきたり、青年が地区事務所に『資本論』を買いに来るなど、従来にない注目が集まっています。
雇用問題でいうと、三重・北勢地区委員会が十二月に“派遣切り”をすすめるトヨタ車体いなべ工場門前で宣伝をしたんです。会社が監視するなかでもほとんどの労働者がためらいなくビラを受け取り、「おっ共産党、ごくろうさん」と声をかけていく。直後に県委員会に同工場で働く派遣の男性から「ありがたい」と電話が入り、「トヨタも利益があるのだから、すぐに雇い止めはおかしい」と訴えてきました。党県議団のホームページにも労働者から「演説活動をしてくれてありがとう」とメールが入り、正月休み中に寮を追い出される人がいることなど怒りを交えて書いていました。
応援メール
佐伯 私がハローワーク前で演説したときは、学費を払うために職探しをしているという男性から「演説を聞いて自分自身救われました」とメールが送られてきました。
市田 みなさんが「労働者の責任ではない。政治の責任だ。政治を変えて人間らしい働き方を確立していこう」と訴えている。それが、現状に苦しみ模索する若者にピタッとくるんでしょうね。いま雇用問題をマスメディアが連日とりあげ、社会問題になっています。その背景には派遣という「使い捨て労働」を志位委員長が国会でとりあげて反響をよびました。また党として偽装請負やサービス残業の問題を早くから一貫してとりあげ、人間らしく働けるルールづくりのために労働者とともにがんばってきたことがある。ほかの政党も派遣労働の見直しをいっていますが、派遣労働を「原則自由化」した一九九九年の派遣法大改悪という「決定的場面」で反対したのは共産党だけでした。この問題で老舗の党ですよね。派遣労働者の勇気ある告発をバックにしながら国会でも論戦をするし、草の根でもたたかいを展開しています。若い候補者は、同世代だけに、親近感も覚えるし、共感が広がるんじゃないでしょうか。池内さんのブログへのアクセスは三十二万を超えたそうですね。(「へーっ」と一同驚きの声)
正座をして
池内 びっくりしています。東京12区は公明党の太田昭宏代表の選挙区で、民主党・小沢一郎代表が出るかもしれないと注目を集めているんです。テレビの取材で「小沢氏の出馬をどう思うか」「日本共産党は(民主党に)譲れば」と問われて、「私は、誰かを落とすためにたっているのではない」といったのがテレビで全国ネットで流れて、それから一気に増えました。メールで二十八歳の会社員が「池内さんは雇用問題に着目してくださっています。池内さんのような意見をもった同年代の人が政治に声を届けてくださるのは大変うれしい」と言ってくれ、「池内さんと同い年で他政党に勤務」しているという人からも「同年代の方が真剣に活動していらっしゃるのは、とても素晴らしい」「支持政党は違いますが、応援しています」というメールが届きました。
せと 若い人の注目というのはその通りで、高校生ですが、演説している前を五、六人のグループがいったん通りすぎたんだけど、戻ってきて正座して演説を聞いてくれた(笑い)。ときどき「いいことをいう」といいながら。最後には私と並んで手を振ってくれました。(笑い)
要求一致 党派も立場も飛び越えて
対話
市田 みなさん、積極的にさまざまな団体への申し入れ・懇談や幅広い人と対話をすすめ、地域で有権者の切実な要求に接していると思いますが、どうですか。
見方変わる
中野 私は二〇〇七年の参院選にも立候補したのですが、そのときも“自民党はあかん”という声が強くてそれが、イコール民主党にいったんですね。それがいまは、“自民党はあかん”は同じでも“共産党がんばれよ”といってくれる。ここが大きく違う。ある商店街で宣伝していたとき「中野くん、商店街はみんな自民党と思わんでええぞ」といわれた。地域をこわしてきた小泉「構造改革」への怒りが強く「おれは共産党に入れるぞ」といってくれるんです。
県内の漁協の六割を訪問しました。自民党の支持基盤で、支援する自民党国会議員に了解をとってから私たちと懇談するという漁協もあります。県内で三番目に大きな鳥羽磯辺漁協の組合長は「共産党に偏見があったが、戸上(幸子・鳥羽)市議の活躍で見方が変わった。ぜひ話を聞いてほしい」と歓迎してくれました。
朝日新聞が自民党支持基盤の崩れを描いた記事の中で、三重県内の漁協組合長の「いっそのこと、次の選挙は共産党に入れようかと思うくらいだ」という言葉を載せました。私たちの活動の反映だと思っているんです。
県農協中央会とも懇談したんですが、党の「農業再生プラン」について会長が「非常にわかりやすくまとめてあり、まるっきり私たち農協が主張していることを代弁していただいている」といってくれました。
せと 地域医療を守る問題も切実で、武雄市では自治体病院の民間移譲を許すなと超党派の市民運動が起こっています。小池晃政策委員長を招いた演説会に、市民病院存続を求める自民、社民の市議、地元医師会会長らが参加して、自民党武雄支部長もあいさつしたので、びっくりしました。
池内 東京・北区でも、社会保険庁解体にともない売却・廃止の危険がある東京北社会保険病院、併設する介護老人保健施設の存続・拡充を求める運動がおきています。
佐伯 雇用促進住宅廃止の問題で大きな変化がおきていて、私はこのとりくみを通じて“政治って自分たちで変えられる”と実感できたんです。皮切りになったのは、富山のあるお母さんが、退去通知が来たと党議員のところに連絡があったことなんです。入居者の人たちの運動と連携して、繰り返し政府や雇用能力開発機構と交渉して、一方的に退去はさせないとか、全住宅で説明会を開くなど大きな変化をつくりだし、入居者の方たちの共産党への信頼がグンと高まっています。この問題を通じて、目の前で困っている人たちに候補者として何をすべきか、ということを学びました。
聴衆が次は担い手 どんどん広がる
つどい
市田 選挙勝利にむけた活動として昨年は「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」が大きくすすんだ年でもありました。「綱領を語るつどい」は七割近い支部で開かれ五十六万人が参加、党幹部が参加した屋内の演説会と合わせると百万人を超えました。国民の切実な関心・要求を入り口にしながら、共産党を丸ごと知ってもらう「つどい」がこれだけ広がっていることは画期的なことです。みなさん、「つどい」や演説会成功へ候補者として奮闘されていると思いますが。
せと すべての自治体・行政区で演説会を開こうと、とりくんできたわけですが、私の出身地、唐津市七山で事実上初の演説会を開いて百六十人の参加で成功しました。十二年前にも開いたんですが、そのときは地元住民の参加はゼロでした。地元党支部も最初は「集まっても二、三人だ」と消極的だったんですが、この間の合併問題での住民との共同の広がりなど話し合って“視野を広げてとりくもう”と腹を固めたんです。私も対話しながら参加をよびかけていったんですが、「もう自民党にはまかせられん」「共産党がんばって」という声が次々出てきて、私も支部も驚いた。七山地域六百戸すべてにビラやパンフを届け、宣伝・対話を強めたんです。
この演説会に参加した伯母が感激をして、以前仕事でいったことのある離島の向島で訴えようといって、そこでも初めて演説しました。二十世帯のうち十二人が演説を聞いてくれて、しかも終わっても帰ろうとせず、その場で懇談になりました。「若い人が出て行って島を守れない」「自民党ではダメだ。政治の中身を変えんといかん」という声が次々だされました。また、七山の演説会に参加した別の人が肥前町というところで「つどい」を準備してくれるなど、広がっていったんです。
市田 私も去年一年間で三十七都道府県八十九カ所をまわりましたが、小選挙区候補をたてていない、これまで党幹部があまりいっていないところで開くことを重視しました。地元の党組織は“自分たちの力で集めよう”と保守・無党派の人々にも幅広くよびかけ、成功につながっています。奈良県吉野郡下市町で開いた演説会には、三町八村から二人の首長、議長、副議長、党派をこえた多数の議員が参加しました。演説会では地元の議長会の会長が「感無量であります」とあいさつしたんです。何しろ党幹部がきたのは他党も含め初めてということですから。私の演説が終わると副町長が壇上の私に駆け寄ってきて手を握り高々とあげた。これには私も驚きました。吉野は林業が廃れ、地方交付税も減らされ、病院もなくなり、地域の破壊がすすんでいて「自民党にだまされた」という思いが強いんです。村を救い栄えさせてくれるのなら、共産党の話も聞こうと、大きく変わっているのを肌で感じました。
佐伯 私もそれをすごく感じます。「つどい」を毎月開いている上市町では、区長に開催を知らせると「回覧で回すから」といってくれる。どの集落でも世帯の半数近い参加で、中には「区長から誘われたから自民党の演説会かと思った」という人もいました。党員も「しんぶん赤旗」読者もいない地域で「つどい」を成功させたことがありますが、ビラを配る党員に、住民が「いつもだまーってチラシまいとるけど、寄り合い開いてみんなに共産党の話をしたらどうけ」(笑い)と声をかけてきたのがきっかけでした。
町のうわさ
せと 私もそれをいわれたことがあります。“共産党は宣伝カーをのりつけて、パッとしゃべって逃げるように去っていく”って(笑い)。「つどい」は誘うときから対話して、要求を出してもらい、共産党はこういう綱領をもっていると正面からぶつけて、いっしょに考えましょうというものだから、歓迎される。多久市の支部が開いている「つどい」は「なんでうちで開かんと」「共産党がよかこといいよるらしいね」と町でうわさになり広がった。
市田 「つどい」や演説会でどのような話をしているんですか。
池内 政策もいいますが、集まった人たちが「何でその若さで候補者になったんだ」という興味を抱いているので、それにこたえるように、なぜ入党したかを語るようにしています。共産党と出会うまでは政治は遠い存在だったし、共産主義は漠然と暗いイメージだけでした。そんな私がなぜ変わったのか。それは小林多喜二の人生を三浦綾子さんの小説『母』を通じて知ったからでした。戦前、命をかけて戦争に反対した人や政党があったことを初めて知りました。多喜二の生きざまにふれ、いま、自分がどういう立場で生きていくか必死に悩んで入党にいたった経過を語っています。
市田 党をどう語るか。いろいろ自由闊達(かったつ)にやればいいのですが、入党の体験を語ることは大事ですね。みなさんが話すと若い人にはもちろん高齢の方にも新鮮にうつると思います。
新しい鉱脈
中野 私は、入り口は切実な要求で、そして根本をきちっと語ることを心がけています。なぜこんなにくらしが大変か、どうしたらいいかということをみんな知りたいと思っています。そういうとき自民党批判だけではよくない。共産党はどう考えるか、日本は欧米とくらべてどんなに異常かということを、資料もつくってわかりやすく語るようにしています。
市田 「つどい」は、党として新しい鉱脈をさぐりあてた、本当にすぐれたとりくみで、今後も大いに発展させていきたいですね。
現実知り腹すわる 党大きくしたい
抱負
市田 年頭から緊迫した情勢が続きますが、みなさんの今年の抱負をお願いします。
池内 立候補を決意して一年になりますが、最初、党から要請されたとき(当時二十五歳)は「えーっ」と大きな声で叫んでしまった(笑い)。でも断るもんじゃないと思った。共産党の前進のためならなんでも自分にできることはやるんだという決意で専従になったので。不安はあるけれど乗り越えるしかないと。気合一発でデビューして毎日が挑戦です。「若いね」とよく声をかけられて「若さ」を重荷に感じたこともあります。でも、活動の中で、あたりまえに生きることがどんなに大変な世の中になっているか―こういう実態を届ける候補者になりたい、共産党を大きくしたいと、現実を知り腹がすわりました。今年はもっと楽しみながら運動を広げていきたいと思います。
佐伯 「つどい」で帰り際、玄関先で私の手をそっと握って「比例は必ず入れるからね」といってくれる―ああ候補者になってよかったと思う瞬間です。私の演説を聞いたのがきっかけで入党した方もいたんです。一回一回の演説を大切にしていきたい。北陸信越ブロックは国会議員がいません。前回わずかのところで届かなかった。あの悔しさをバネにして「ブロック心をひとつ」にして全力をあげる、その先頭にたちたいと思います。
演説に磨き
せと 「つどい」はぼくら若い世代はやりやすい面がある。「こんな若い子が、ちゃらちゃらしていると思っていたが、意外といいこという」(笑い)と受け止めてくれる。いま地方では地域が崩壊するとどこでも困っています。そういうことをいっしょに考え、打開策を探っていく候補でありたい。自分を成長させたいと、候補者を決意したので、ぼくも気合一発(笑い)でがんばりたい。
中野 もっと演説にみがきをかけていきたい。有権者の中に「共産党はのびるよ」という期待感があります。がんばればがんばっただけ、共感が広がる手応えを感じています。いま本当にチャンスで、これをものにして議席を増やせば確実に政治は変わる。「国民が主人公」の民主的政権をつくる第一歩の選挙になる―このことを胸に刻んで一日一日全力をあげていきたい。
市田 みなさんが、いろいろ苦労されながらも、その中で成長する姿を知って、とても励まされました。みなさん、社会的経験や党歴は浅いけれど、若さと行動力、新鮮で豊かな感性がある。そしていちばんの強みは、日本共産党員だということ。多くの国民とどんな問題でも響きあう綱領をもっている。その党の一員だということです。ベテランの自民党や民主党の候補者でも現状を変え、未来を語ることはできない。国民の心にフィットした綱領をもつ党の党員だということに誇りをもち、確信をもってそれぞれの個性を大いに発揮してがんばってほしいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
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