2009年1月3日(土)「しんぶん赤旗」

肩寄せ越年 生きる希望

寮追われ■老母と■自殺未遂、警官と来村

東京・日比谷 派遣村


 「自殺する場所を探していてたどり着いた」「わらにもすがる思いでした」――「派遣切り」で追い詰められた人たち三百人以上が駆け込んだ東京都千代田区の日比谷公園「年越し派遣村」。ギリギリの状況を何としても生き抜こうと、労働者や市民ボランティアのあたたかな支えあいが生まれました。


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(写真)全国から「年越し派遣村」に送られてきた支援の食料品の山=2日、東京都千代田区の日比谷公園

 「クリスマスの昨年十二月二十五日に寮を出された。まさか、こんな年越しになるとは思わなかった」と話す男性(47)は、薄手の上着の下に、着替えを全部重ね着して震えていました。救援物資の防寒着や携帯カイロを受け取り、一息ついていました。

 年老いた母と娘や、夫婦で、派遣村を頼った人もいました。神奈川県の三十代男性は、失業を苦に飛び降り自殺をしようとしたところを保護され、警官に付き添われて派遣村に来ました。

 三重県のシャープ亀山工場で「派遣切り」にあい、十二月二十七日に寮を退去した男性(29)。友人を頼って夜行バスで東京へ来ましたが、友人宅に居づらくなり、ネットカフェで派遣村を見つけました。「張り詰めた気持ちがほぐれて、一気に眠くなりました」

支援登録550人

 ホームレス状態の派遣労働者を支援しようと、五百五十人以上がボランティアに登録しています。中野共立病院の看護師(24)は、看護学校時代の友人と医療ボランティアでテントを回りました。「若い失業者が多くて驚きました。みなさん寒い中をすごし、体に不安があっても病院にかかれないでいました」と話します。

 炊き出しのおでんを配っていた首都圏青年ユニオンの男性組合員(28)は「状況は大変だけど、肩を寄せ合い、助け合う人たちに希望を感じました」と語ります。炊き出しを手渡すと、失業者の顔がほころびました。

 休憩テントでは、医師の谷川智行さん(日本共産党衆院東京ブロック比例候補)が、体調を崩し寝込んだ男性(33)の健康状態を聞きました。男性は派遣村に来る前は、廃車のなかで寝泊まりしていました。翌日、あかぎれで割れた手でお茶を飲みながら、「本当にありがたいです」と話していました。

相談に長い列

 生活や健康の相談テントには長蛇の列ができました。神奈川県相模原市で「派遣切り」にあった男性(34)は、都内で生活保護を受けたものの、入所させられた民間ホームレス施設が劣悪なため派遣村にやってきました。その施設は、相部屋に宿泊させ、月額十万円近い利用料で生活保護費のほとんどを取っていきました。

 「生活をまるで監獄のように制限されました。アパートに入居したい」と訴えました。

 湯浅誠NPO自立生活サポートセンターもやい事務局長(派遣村村長)や弁護士、司法書士が解決策を提案。湯浅さんに「同様の事例を何件も解決しています。大丈夫。一緒に行政窓口に行きましょう」と声をかけられ、男性は胸をなでおろしていました。

 集まった募金で銭湯に出かけたり、床屋ボランティアも行われました。

エイサーに涙

 元日には、入村者の気持ちをなごませようと、もちつき大会が行われ、入村者とボランティアが入り交じってきねをつきました。たこ揚げやこま回しなども行われました。

 二日の村民集会には、沖縄のエイサーの歌舞が披露されました。

 「故郷の音楽を聞いてなつかしくなりました」と男性(37)が、涙をためていました。九月三十日に解雇になり、カプセルホテルなどを泊まり歩きました。「両親も亡くなり天涯孤独。就職の面接に行っても、身元がないから、採用されません。安定した住居と仕事がほしい」と話していました。



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