2008年12月28日(日)「しんぶん赤旗」
主張
世界の温暖化
対策強化へ大胆な政治決断を
ホッキョクグマの危機、ヒマラヤ山脈での氷河消滅の加速化など、地球温暖化を示す諸現象が注目されています。温暖化は、海面上昇による島しょ国や低地での浸水、台風など自然災害の増加、砂漠化や食料生産の減少、感染症の拡大などとして、人類を脅かします。
温暖化を初めて国際問題として取り上げた第一回世界気候会議から二〇〇九年で三十年。人間活動が温暖化をもたらしていることはもはや常識化しています。温室効果ガスの排出を削減し、気温上昇を工業化以前に比べ二度以内に抑えることは国際社会が直面する重大課題です。
協力拡大の可能性も
京都議定書第一約束期間(二〇一二年まで)以降のガス排出規制を定める新協定の策定期限まで一年を切りました。
米国発の金融・経済危機が世界を覆う中、国際交渉は厳しさを増し、今月開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)では進展がみられませんでした。途上国が先進国に十分な責任を求めたのに対し、日本をはじめ若干の先進国は消極姿勢に終始しました。
しかし、温暖化対策に時間の猶予はありません。交渉を成功に導くには、対策を強化する大胆な政治意思が求められています。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長が十七日、各国首脳による会合を来年九月に開くと述べたのも、そうした危機意識の表れです。潘事務総長は「すべての国ぐにが同意できるバランスのとれた包括的とりきめ」をつくるには「尋常でない指導力」が必要だと強調しています。
協力拡大の展望も広がっています。欧州連合(EU)は首脳会議で、二〇年までに排出を一九九〇年比で20%削減する中期目標を承認し、実現のための包括策にも合意しました。具体策には、いまは無料の企業による排出枠を有料化する措置も含まれています。
イギリスは排出削減に法的拘束力をもたせる気候変動法を成立させました。京都議定書の削減目標を達成したばかりのドイツは、二〇年までに九〇年比で40%削減するとの野心的目標を掲げています。
途上国からも注目すべき主張が出ています。中南米・カリブ海諸国が初めて開いたサミットの宣言は、先進国と途上国との「共通するが差異のある責任」原則を指摘しながらも、「より野心的な目標が必要だ」と強調しています。
英紙ガーディアンによれば、イギリスの公共施設が排出する二酸化炭素だけでもケニア一国の排出量に匹敵するといいます。世界が一体となって温暖化対策を進めるうえで、先進国はとりわけ大きな責任を負っています。
財界本位からの転換を
ブッシュ政権下で世界の流れに逆行した米国でも、オバマ次期大統領が温暖化対策に積極的な姿勢をとり、多国間交渉の促進に期待が高まっています。
一方、日本政府は財界本位の姿勢を一歩も出ようとせず、焦点の中期削減目標さえ示せないままです。COP14でも日本は世界の足を引っ張ったとみられました。
温暖化対策は国際協力が最も求められている分野であり、日本はそこでイニシアチブを発揮することこそが求められています。政府の後ろ向き姿勢を転換させることは急務です。
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