2008年12月27日(土)「しんぶん赤旗」

ソマリア派兵 動き急

米新政権の目線意識


 アフリカ東部ソマリア沖での海賊対策を口実とした海上自衛艦派兵の動きが急展開しています。

与党内にも慎重論

 麻生太郎首相は二十六日、浜田靖一防衛相にソマリア派兵の「検討作業の加速」を指示。首相は二十五日、政府が着手している新法を待たずに現行自衛隊法八二条の海上警備行動を適用する考えを示しています。来春にも派兵に踏み切るとの報道もあります。

 なぜ急ぐのか。米側からは「海賊対策は公益の問題。海上自衛隊ができないはずはない」(キャンベル元米国防副次官補、十八日の都内での講演)などソマリア派兵を求める声が相次いでいます。

 さらに、中国が二十六日、艦船三隻をソマリア周辺海域に派遣したことから、「中国に先を越されてはならない」との声が強まっています。米新政権の目線と中国の動向を意識しての「派兵ありき」が真相です。

 しかし、ソマリア派兵には多くの問題が残されており、政府・与党内でさえ海上警備行動には慎重論が強いのが実情です。

 自民党の中谷元安全保障調査会長は、「ソマリアに行っても自衛隊は警察権がないので海賊を逮捕できない」と否定的な見解です。(十一月十四日、都内での講演)

 増田好平防衛事務次官は二十五日の記者会見で、「海上警備行動での権限と海賊対策であるべき武器使用には差がある」と指摘。小火器しか持っていない海賊船の取り締まりに重武装の軍艦が対応することへの疑問を示しました。

 国際海事局(IMB)の統計によると、世界全体では海賊事件が激減する一方、ソマリア周辺海域では増加傾向にあります。

 その背景には、二十年以上続くソマリア内戦があります。国家が崩壊し、困窮した漁民らが身代金目的に海賊行為に走っているとされています。ソマリアでの漁業収入一・六億円に対して海賊収入は三十二億円という統計もあります。

国際協力が不可欠

 従って、中長期的にはソマリアの混乱終結・復興のための国際協力が不可欠です。英国では、アフリカの漁業支援のための資金供与を行っています。

 国際海事機関(IMO)は周辺国による地域協力を呼びかけています。このなかでイエメンが自国の海上警備隊強化のための協力を各国に求めています。

 海上保安庁は十六日、イエメンやオマーンに海賊対策のための調査団を派遣しました。

 自衛隊派兵先にありきではなく、こうした取り組みをはじめ、日本が果たすべき海賊対策での国際協力を探求すべきです。(竹下岳)


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