2008年12月27日(土)「しんぶん赤旗」
主張
浜岡原発
6号機増設計画の撤回を
中部電力が静岡県・浜岡原発の1、2号機を廃炉とし、新たに6号機を増設すると発表しました。
浜岡原発は、近い将来に想定される東海地震の震源域の真上にあります。東海地震はプレート境界型の巨大地震であり、地震災害と原子力災害が同時に起こる「原発震災」も懸念されています。
東海地震を想定せずに設計された1、2号機の廃炉は当然です。しかし、なぜその浜岡に増設するのか、納得できるものではありません。
耐震安全性軽視の計画
昨年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が深刻な被害を受けて以来、すべての原発の耐震安全性が厳しく問われています。東海地震のエネルギーは中越沖地震よりはるかに大きいと想定されます。浜岡原発にとって、耐震安全性を抜本的に見直すことこそ最優先の課題です。
ところが今回の6号機増設計画は、事実上、耐震安全性の見直しを棚上げしたものとなっています。古くて出力も小さい1、2号機を耐震補強するよりも、一基増設したほうが経済的だという損得勘定から出てきたものです。こんな安全軽視は許されません。
中部電力は、「耐震性を含めた安全性が十分に確保されている」としていますが、この主張に根拠はありません。
浜岡原発では、国の耐震設計審査指針が一昨年改定されたことをうけて、耐震設計で想定する地震動(基準地震動)を六〇〇ガルから八〇〇ガルに引き上げました。3〜5号機は、一〇〇〇ガルの地震動を目標にした耐震補強を済ませたといいます。しかし、これはすべて中越沖地震以前の知見にもとづくものです。
中越沖地震では、柏崎刈羽原発地下の岩盤上の地震動は一六九九ガルとされています。また地震データの解析から推定される震源や地下構造の特性も考慮した結果、柏崎刈羽原発の基準地震動は四五〇ガルから二三〇〇ガルに引き上げられました。
浜岡原発で想定する基準地震動は、中越沖地震の半分以下、柏崎刈羽原発の新たな基準地震動の三分の一程度にすぎません。浜岡原発周辺の地下構造特性の調査も始まりましたが、その結果はまだ出ていません。
これで「安全性が十分に確保されている」といわれても納得できるものではありません。各地の住民が1〜5号機すべての運転停止を求めてきたのは当然です。ましてや、6号機増設など、とうてい受け入れがたい計画です。
6号機増設は、1、2号機廃炉の代替で、「電力の安定供給」のためだといいます。しかし、すでに1号機は七年以上、2号機は四年以上も運転をしていません。それでもこの間の電力供給に支障をきたしてはいないのです。
立地そのものの見直しを
中越沖地震を機に、多くの原発の真下や直近に活断層があることが明らかになり、原発立地のあり方が厳しく問われています。
とりわけ浜岡原発は、多くの国民に不安を与えています。
東海地震震源域での増設は、無謀としかいいようがありません。将来に禍根を残さないためにも、住民の不安や専門家の批判に耳を傾け、立地のありかたそのものを見直すことが求められています。