2008年12月26日(金)「しんぶん赤旗」

生保加算廃止取り消し訴訟

生活から目背ける判決

広島地裁 原告の訴え棄却


 生活保護費を受給する七十歳以上の高齢者、母子家庭、多人数世帯に加算される保護費を削減したのは不当として、広島県生活と健康を守る会の会員二十七人が広島市などに処分の取り消しと削減分の支払いを求めた訴訟の判決が二十五日、広島地裁でありました。能勢顕男裁判長は「減額、廃止の決定は不合理とまではいえない」として請求を棄却しました。


 原告側は、二〇〇五年十二月に提訴した高齢者三十人と母子家庭の母親二人の計三十二人のうち、高齢者五人が今年四月の結審までに、さらに一人が結審後に死亡。加算の削減によって食費などを削らざるを得ず、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ができなくなったと主張していました。

 能勢裁判長は、老齢加算の減額、廃止について「七十歳以上の高齢者の最低の生活費が満たされない事態をもたらしていない」と判断。母子加算の減額、廃止についても「母子加算に相当するほどの特別な消費需要があるとも言い難い」としました。さらに、正当な理由がなければ保護内容を不利益に変更されないとした生活保護法第五六条に違反するとした訴えについて「厚生労働相の裁量の範囲内」と退けました。

各団体が抗議

 生活保護裁判で広島地裁が原告側敗訴の判決を出したことに対し、「生存権裁判を支援する全国連絡会」と「全国生活と健康を守る会連合会」は二十五日、それぞれ抗議の声明を出しました。

 声明は、判決について、「厚生労働大臣の裁量を広く認めるもので、きわめて残念」(生存権裁判を支援する全国連絡会)、「『健康で文化的な最低限度の生活』をうばわれた、高齢者、母子世帯の深刻なくらしの実態から目をそむけたもの」(全国生活と健康を守る会連合会)と厳しく批判しています。

 そのうえで、両会は、格差と貧困の拡大、大企業の「派遣切り」の嵐が吹く中、国の社会保障費削減政策の見直しや生活保護制度の改善・充実が求められていると指摘。各地で続く同様の裁判の勝利とともに、削減政策を転換させるために世論と運動を広げる決意を表明しています。


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