2008年12月26日(金)「しんぶん赤旗」

米、アフガン増派本格化

国づくり支援へ 転換求める声も


 【ワシントン=小林俊哉】米国防総省のブライアン・ホイットマン報道官は二十二日、ゲーツ国防長官が陸軍第八二戦闘航空旅団(二千八百人)のアフガニスタン展開を許可したと発表しました。展開は来春。オバマ次期米政権発足を前に、米国のアフガン増派方針が本格化しています。

次期方針織り込む

 同旅団の増派は、北大西洋条約機構(NATO)軍で組織するアフガン国際治安支援部隊(ISAF)の増強が理由です。米軍は現在、アフガンに治安維持のためのISAFの部隊として約一万四千五百人、独自に実施している反政府組織タリバン掃討のための「不朽の自由作戦」のために約一万九千人を展開しています。

 今後、四旅団を増派する方針で、来年一月には第一陣となる陸軍第一〇山岳師団第三旅団が展開されます。十九日には、マレン米統合参謀本部議長が二万人から三万人の増派方針を表明しました。現在の二倍近くの展開規模となります。

 オバマ次期米大統領は、イラクから兵力を撤退させる一方、国際テロ組織アルカイダの掃討を強調して、アフガン戦争に集中する方針です。オバマ政権での国防長官留任が決まっているゲーツ氏らの動きは、次期政権の方針をも織り込んだものです。

 一方で、アフガンの国家づくりを支援する観点から、戦略の見直しを求める声も識者から挙がっています。

 国連アフガン特使を務めたブラヒミ国連事務総長顧問は十八日、ワシントン市内の会合で、国際社会はどういうアフガンをつくりたいのかをはっきりさせるべきだと主張。同じ会合に出席したガニ元アフガン財務相も、軍事作戦の目的は何だと声を張り上げました。いずれも、アルカイダ掃討の側面を強調する米政府の方針では、問題の解決に向かわないとする批判がにじみました。

対話の必要認める

 米アフガン大使を務めたハリルザド国連大使も、二十一日放映のテレビ番組で、アフガン増派の必要性を強調しながらも、アフガン国民が自身を統治できるような国軍づくりや汚職の一掃、貧困対策の重要性を強調。タリバンの一部勢力との対話についても、「和解に向かえるようなタリバンの一部勢力には接触する必要がある」と述べざるをえませんでした。

 オバマ氏は「アフガンには独立を求める強烈な伝統がある。われわれが単に長期占領を押し付けようとしていると(アフガン国民に)受け取られるなら、うまくいかない」(六日)とも述べています。軍事一本やりではテロの根絶はできないことが明白になっているいま、オバマ政権の増派方針は、矛盾を抱えたまま事実上スタートしています。


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