2008年12月23日(火)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄米軍流弾事件
県民の不安 政府は受け止めよ
沖縄で民家に対する流弾事件がまたもや発生しました。米軍キャンプ・ハンセンに隣接する金武町伊芸区にある住宅の駐車場にとめてあった乗用車の前部に、流弾がめりこんでいました。近くの町道でも流弾が見つかっています
一歩間違えば人命が奪われていた重大事件に県民が怒るのは当然です。沖縄県議会は十九日、米軍キャンプ・ハンセンでの実弾射撃訓練の即時中止を求める抗議決議と日本政府への意見書を全会一致で可決しました。政府は県民の意思を受け止め、米軍に実弾射撃訓練をやめさせ、県民が安心して暮らせるようにすべきです。
危険がなくならない
十三日、米海兵隊のM2重機関銃の弾と見られる金属片が乗用車にめりこんでいるのが発見されました。乗用車の所有者の祖母は十日午後、駐車場脇の草花に水をやろうとしていたとき、「バーン」という音に振り返ると車の前部から灰色の煙があがっていたといっています。「車がなかったら私に当たっていた」という危険な事態でした。全容解明が重要です。
伊芸区住宅地域から沖縄自動車道をはさんだ数百メートル北側に広がるキャンプ・ハンセンには、実弾射撃訓練場が十三カ所あります。伊芸区に隣接したものだけでも五カ所もあります。住宅地域への数多くの流弾が訓練場から発射されたことは、それぞれの着弾した角度や状況からみても明らかです。
今回の銃弾も、駐車場に着弾した角度からみていずれかの訓練場から発射された可能性が濃厚です。弾も猟銃など民間人がもつ銃の弾ではなく、米軍しか使わない銃の弾だという声が圧倒的です。
これまでも庭先で遊んでいた三歳の幼児が大腿(だいたい)部に負傷、在宅の十九歳の女性が大腿部に重傷、民家の水タンク貫通など、伊芸区だけでも米軍流弾事件が相次いでいます。しかし米軍は流弾で被害者がでても、米軍の銃弾だと認めたことはありません。事実を認めれば基地が危険の元凶だと認めることになるからです。
今回もまた、「米軍によるものかどうか判明していない」という理由で、米軍は実弾射撃訓練を続けています。せめて全容が解明されるまで中止せよという住民の要求さえ聞こうとせず、訓練を続けた態度はきわめて横暴です。
米軍が事実を認めないことをいいことにして、これまで流弾事件の徹底解明を避けてきた日本政府の態度は重大です。流弾事件の原因をあいまいにし、実弾射撃訓練を認めてきたことが、米軍を増長させ、流弾事件をくりかえさせている背景になっていることを政府は重く受け止めるべきです。
米政府と交渉せよ
実弾射撃訓練を認めながら住民の安全を確保するといってもそれは無理な話です。米兵が射撃方向を間違うこともあれば、岩で跳ね返って銃弾が住宅に飛び込むこともあります。実弾射撃を認める限り流弾事件はなくなりません。
住民の安全を確保するというなら、東西約十三キロメートル、南北約四・二キロメートルしかないキャンプ・ハンセンで、射程が七キロメートル近くもある重機関銃などの危険な実弾射撃訓練を中止するしかありません。
日本政府は、沖縄県民をこれ以上苦しめないために、実弾射撃訓練の全面中止をただちに米軍に求めるべきです。
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