2008年12月22日(月)「しんぶん赤旗」
主張
保育制度改悪ノー
制度充実し増設こそ解決の道
「子どもを安心して預けて働きたい」。雇用や生活の不安が広がるなかで、国民の保育要求はいっそう切実さをましています。
毎年四月の入所の申し込みにも希望者があふれ、さらに営利企業が経営する保育所が突然倒産して子どもが行き場を失う…。まるで「保育難民」のような事態に、国と自治体の保育責任は果たされているのかという危惧(きぐ)と不安がひろがっています。
国と自治体の責任の後退
乳幼児が「保育に欠ける」場合は、「保育所において保育しなければならない」という児童福祉法第二四条によって、市町村に保育の実施が義務づけられています。こうした公的な制度だからこそ、二万三千カ所の保育所に二百万人の幼い子どもを安心して預けて働くことができるのです。
ところがいま政府は、保育に対する国・自治体の責任を大きく後退させる重大な制度改悪を、父母、保育関係者の反対を押し切って決定しようとしています。社会保障審議会の少子化対策特別部会が第一次報告案に盛り込んだ「新たな保育の仕組み」がそれです。
一つは、自治体の仕事は、介護保険のように、保育の必要性の認定や、補助金を給付する仕事などに限定し、保育の実施に直接の責任は負わないというものです。
保育料は、自治体による所得に応じた設定からサービス量に応じたものとなります。親の所得によってサービスの質や量が違う―そんな格差がうまれかねません。希望者と事業者の直接契約で入所者を決めるので、低収入の家庭の子やより援助が必要な障害児が断られるなどの危惧もあります。
二つめには、子どもの発達や成長にとって大事な役割をもっている保育士の数や施設の広さなどを定めた最低基準を、規制緩和の方向で検討しようというものです。
「量の拡大には多様な主体の参入が必要」であるとして、営利企業を保育事業に本格的に参入させようとしています。しかし東京の認証保育所では、営利企業による保育所が補助金の不正受給で処分されるなど、すでにそのゆがみと破綻(はたん)が実証されています。
厚労省は「新たな仕組み」で、すべての家庭の子どもが保育を受けられるようになると強調します。しかし、保育料は収入にかかわらずサービスに応じたものになり、だれもが利用できるかは疑問です。
そもそも今日の保育所不足は、大企業とアメリカにいいなりの大型開発と軍拡優先のために、社会保障や福祉の切り捨てをすすめ、保育でも補助金削減、保育所運営費の一般財源化によって地方自治体の保育行政を圧迫してきたことによるものです。
政治の責任を反省し、一般財源化をやめ、国の保育予算を増額し、認可保育所の新・増設をすすめることこそ必要です。
結論先にありき許さない
父母、国民の願いに反する保育制度改悪に対して、公的保育制度を守り拡充を求める署名は、わずか四カ月で百六十四万にひろがっています。厚労省が「結論先にありき」で審議会報告のとりまとめを強行することは、絶対に許されません。
日本共産党は、国と自治体の責任をおおもとから後退させる保育制度の改悪に反対です。公的制度の拡充のために力をつくします。
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