2008年12月21日(日)「しんぶん赤旗」

主張

財務省原案

「構造改革」の土台を転換せよ


 麻生内閣は二〇〇九年度予算の財務省原案と〇八年度の二次補正予算案を閣議で決定しました。

 深刻な景気悪化から暮らしを守り、外需頼みから内需主導に切り替えて経済を立て直すために、いまほど政治の役割が求められているときはありません。

 麻生太郎首相は二つの予算で「果断な対策」を実行するとのべています。しかし、予算案の中身は「果断」には程遠い“間に合わせ”予算であり、危機への対応にも日本経済の体質改善にもまったく“間に合わない”対策です。

「トヨタショック」

 十四兆円もの内部留保を持っているトヨタが、解雇されれば路頭に迷う最も弱い立場の派遣・期間社員を切り捨てる―。「トヨタもやっているのだから」と派遣・期間社員切りが一気に拡大しました。さらに日本経団連の御手洗冨士夫会長が代表を務めるキヤノンや、ソニーの人減らし計画が拍車をかけ、かつてない規模と速度でリストラが進んでいます。

 大銀行が先頭に立つ中小企業への貸し渋りとともに大企業の身勝手な行動が、つるべ落としのような景気悪化の悪循環を引き起こしています。一万六千人の削減を発表したソニーの中鉢良治社長は、「雇用を優先して損失を出すことが私に期待されていることではない」と断言しています。株主の顔と目先の利益以外は見えない経営者を止められるのは、政治の力と国民の運動しかありません。

 リストラ、貸し渋りを何としてもやめさせる姿勢がないことは、麻生内閣・自公の経済対策の致命的な欠陥です。

 財務省原案は社会保障の削減幅を年金特別会計の「埋蔵金」で圧縮し、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源にも「埋蔵金」を充てています。

 特別会計の積立金など、いわゆる「埋蔵金」を生活を守るために活用することは必要ですが、あくまで一時的な財源にすぎません。毎年必要な財源を「埋蔵金」でまかなうのは、従来型の予算編成を変える意思も能力もないことの表れであると同時に、「三年後の消費税増税」への布石です。

 道路特定財源の一般財源化の骨抜きや軍事費の温存、大企業減税や大銀行応援のバラマキ―。暮らしを犠牲に大企業・大銀行を応援し、外需にすがる予算の本質的な性格は何も変わっていません。

 麻生内閣の予算の土台は、小泉内閣が決めた二〇〇六年の「骨太方針」です。それを夏に閣議決定した概算要求基準に明記し、先日の予算編成の基本方針でも「維持」すると確認しています。社会保障を切り詰め、軍事費を聖域にし、大企業減税を続けて、最終的な収支は消費税の増税で合わせる本末転倒のやり方です。

「小泉予算」切り替えて

 自公政府は増税や社会保障の改悪で年間十三兆円の負担を国民に押し付けてきました。一年限りの二兆円の「定額給付金」は焼け石に水であり、一生のしかかる消費税増税の前では「蚊の涙」です。

 小泉「構造改革」予算の土台を根本から変えない限り、内需の低迷を脱することはできません。暮らしと中小企業を守る予算、年間五兆円の軍事費と七兆円の大企業・大資産家向け減税にメスを入れる予算に転換することが、ますます重要になっています。


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