2008年12月18日(木)「しんぶん赤旗」

主張

経営労働委報告

「一丸」の名でがまん押し付け


 トヨタやキヤノン、ソニーなど日本を代表する大企業による「派遣切り」「期間工切り」などと呼ばれる大量解雇が労働者の暮らしと経済の先行きを脅かしています。

 多くが寮住まいなどの非正規労働者にとって、突然の解雇は住む場所も奪われ、年の瀬に寒風のなかへ放り出される重大事態です。無法な解雇を規制し雇用を維持する政府の責任とともに、企業に社会的責任を果たさせることが、いまこそ求められています。

雇用確保は社会的責任

 その折も折、日本経済団体連合会(日本経団連)が、“財界の春闘方針”と呼ばれる経営労働政策委員会報告を発表しました。

 「労使一丸で難局を乗り越え、さらなる飛躍に挑戦を」がことしの副題です。ところが報告では、「雇用の安定」が原案にあった「最優先」から「努力する」に後退し、「国際競争力の維持・強化」が第一だと、賃上げは極力抑えこむ態度が打ち出されました。これでは一方的に労働者にがまんを押し付けることにしかなりません。

 驚いたのは報告には、いま全国で怒りが渦巻いている大規模な人減らしへのまともな説明も、深刻な貧困と格差をどう打開していくのかの方針もないことです。

 大企業は、景気がいいときには賃金の安い非正規労働者を増やし、成果主義賃金などで労働者を競わせてもうけを拡大してきました。文字通り労働者に貧困と格差を押し付けてきたわけです。日本経団連など財界団体はそうしたやり方を奨励し、労働者派遣の原則自由化など「規制緩和」を政府に求め続けてきました。

 それが一転、金融・経済危機をむかえ減益になりそうだというだけで、労働者を切り捨て、賃金もさらに抑え込もうというのです。いったい大企業の経営者や財界団体の幹部には、解雇を押し付けられ、路頭をさまよう期間労働者や派遣労働者の怒りと苦しみの声は耳に届かないのか。財界・大企業の身勝手さにもほどがあります。

 大企業はもうけが減りそうだといっても赤字になったわけではなく、大もうけをためこんだ内部留保もたっぷりあります。現に株主にたいしては配当を減らすどころかすえおきか増やす企業が大半です。これでは「労使一丸」といっても、労働者にがまんを押し付けるだけで、経営者や株主はこれまでどおりやりたい放題ということになります。

 企業は経営者や株主だけのものではありません。経済が深刻なときこそ、これまでため込んだもうけをはき出してでも、雇用の安定や労働者の生活向上に責任を果たすのは企業の社会的な責任です。その責任を顧みようとしない財界・大企業の態度は、厳しく批判されて当然です。

悪循環止めるためにも

 重大なのは、大企業を先頭にかつてないスピードで進められている解雇や賃金の抑制が、労働者の生活を脅かすだけでなく、地域経済を破壊し、消費を落ち込ませて、経済危機をいっそう深刻なものにしていることです。企業にとっても存立自体が危うくなる事態です。

 悪循環を食いとめるためには、大企業の違法・無法な人減らしをやめさせることが不可欠です。何が何でももうければいいという「もうけ第一」主義に、いまこそ歯止めをかけるべきです。


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