2008年12月17日(水)「しんぶん赤旗」

保育制度の改変案

親と子の安心崩す


 社会保障審議会少子化対策特別部会が十六日に大筋了承した保育制度の改変案(「第一次報告」)は、幼い子どもを育てながら働く親の安心感を、根底から脅かすものです。

 「一次報告」は、高まる保育ニーズに対応できないのは現行制度に問題があるからだと指摘し、「現行制度についての必要な改革」=「新たな保育の仕組み」を求めました。ここには、重大な議論のすり替えがあります。

責任のあり方転換

 現行制度では、市町村が親の就業などで「保育に欠ける」子どもに対し、親の収入にかかわりなく保育を提供する義務を負っています。入所を希望しているのに入れない待機児童の解決も、市町村の責任です。

 待機児が多い原因は、現行制度にではなく、市町村が十分な保育体制を提供できるような財源を保障してこなかった国の政策にあるのです。

 「新たな保育の仕組み」は、国と市町村の保育への責任のあり方を、大きく転換させるものです。

 保育所と保護者との直接契約制度になれば、保育所を探して契約するまで、すべて保護者の自己責任となります。首都圏を中心に展開していた企業経営のハッピースマイル保育所が突然閉園したとき、次の入所先探しに自治体が取り組まざるを得なかったのは、現行制度のもとで市町村に保育の実施責任があるためです。直接契約になれば、こうした入所後のトラブルの解決も親の責任とされかねません。

保育団体から異論

 保育団体からは、「新たな仕組み」案が公表された九日以降も「公的責任の後退だ」(日本保育協会)、「子どもの発達をしっかり保障していけるのか」(全国保育協議会)などの強い異論が出ています。このため、特別部会も十六日の時点では「一次報告」の正式決定は見送りました。

 「年内に結論」という政府のスケジュールに固執し、この重大な改悪を押し切れば、子どもたちの未来に重大な禍根を残すことになります。(坂井希)



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