2008年12月16日(火)「しんぶん赤旗」

保育の市場化拡大 自治体の役割後退

厚労省の保育制度改変案

「直接契約」そのもの


 厚生労働省は、十六日の社会保障審議会少子化対策特別部会で「新たな保育の仕組み」を決めようとしています。

新たな仕組み

 「新たな仕組み」案(九日提示)は、保護者と保育所との間に「公的契約」を結ぶ考えを打ち出しました。

 「直接契約」導入への厳しい批判が強まるなか、同省は「市場原理に基づく『直接契約』とは違う」としています。しかし、考え方も仕組みも「直接契約」そのものです。

 いまの制度では、保護者は市町村に保育所入所を申し込みます。市町村が保育の必要度を判断し、入所先を決定します。市町村は公・私立の認可保育所に保育の実施を委託し、運営費を保育所に払います。利用者は所得に応じた規定の保育料を市町村に納めます。児童福祉法第二四条に基づき、市町村が保育の実施責任を果たす仕組みです。

 「新たな仕組み」では、保護者は、どの程度の保育時間が必要かなど、市町村に認定を求めます。認定された保護者は自分で保育所を探し、入所を申し込んで契約を結びます。保育料も保育所に直接支払います。

 市町村の役割は、これまでのような保育を受ける権利の保障に責任を負う立場ではなく、契約に基づく保育サービスの「売買」が円滑に行われるよう条件を整える立場へと、大きく後退します。

手だて示さず

 「新たな仕組み」には懸念がたくさんあります。

 障害児や、保育料を滞納しそうな家庭の子どもは、経営に響くため入所を敬遠されがちです。厚労省は「保育所に応諾義務や優先受入義務を課す」としていますが、具体的手だては示していません。

 保護者は、保育所探しから契約まで自己責任でやらなければなりません。小さな子どもを抱えながら情報を集め、入所先が決まるまで駆け回るのは大きな負担です。

 厚労省は、「公定価格」を定めるとしています。しかし、公定は基本的なサービス部分だけ。利用者ごとに保育時間の上限量が決められるので、超えた分は自己負担で、さまざまなサービスごとに料金が加算され、負担増の恐れがあります。

 現行制度では都道府県による保育所の認可制度をとっています。しかし、「新たな仕組み」では、「指定制」をとり入れ、事業者に広く参入を認めるとしています。ハッピースマイル保育所問題のように、悪質事業者が参入し、突然撤退する事態も心配されます。

質の低下懸念

 財界の要望が強い、保育所運営費の使途制限緩和も検討課題にしています。株主配当や事業拡大に回されれば、人件費や保育経費を切り詰めることによる保育の質の低下、子どもへの影響が懸念されます。

 「新たな仕組み」は、保育の「市場化」を拡大し、国と自治体の責任を投げ捨てる大改悪にほかなりません。

 (坂井希)

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