2008年12月16日(火)「しんぶん赤旗」
自立支援法
応益負担を堅持
社保審部会が報告書了承
社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の障害者部会は十五日、障害者自立支援法の施行三年後の見直しに関する報告書を大筋で了承しました。政府は報告書をふまえ、同法改正案を次期国会に提出します。
報告書では、障害者・家族に重い負担となってのしかかっている「応益負担」(利用した福祉やサービスの原則一割を利用者が負担)の考えを堅持する立場を改めて示すものになりました。
これまでの議論では、委員から「応益負担」についての反対意見が出されましたが、報告書では、「負担軽減措置」で、実質的に「応能負担」になっていることを強調しました。いくら軽減措置をとっているといってもあくまで期限付きの「特例」で、原則一割の負担を強いる制度の根幹は変えないというものです。
解説
届かない現場の声
自立支援法の見直しについての厚労省の報告書を了承した十五日の社会保障審議会・障害者部会では、「議論が不十分」「現場の声が反映されただろうか」との声が相次ぎました。
「(法施行で)現場では大変な状況に陥っているが、議論されてこなかった」(小板孫次・日本知的障害者福祉協会会長)
「(さまざまな課題が)議論にはならなかったというのが率直な意見だ」(安藤豊喜・全日本聾唖<ろうあ>連盟理事長)
「所得保障、利用者負担への対策がない。ここも(議論が)不十分だ」(副島宏克・全日本手をつなぐ育成会理事長)
事業所の収入減の要因となっている「日払い」方式や、「障害程度区分」についても議論が必要だった、との声も出されました。
今年四月からの見直しの議論の過程では、厚労省は国民からの意見も公募(七百九十七件の意見)したほか、障害者関係団体のヒアリング(二十六団体)も実施されました。これだけ広範な人たちの意見を聞きながら、報告書は「最初に結論ありき」というものに終始しました。
今後、政府は自立支援法の改正法案の検討に入りますが、「応益負担」の撤廃をはじめ、報告書の枠組みにとらわれない抜本的な見直しが問われています。(鎌塚由美)
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