2008年12月14日(日)「しんぶん赤旗」
障害者自立支援法
「応益負担」 基本変わらず
社保審部会に提示 厚労省の「見直し」案
厚生労働省は十日の社会保障審議会障害者部会(潮谷義子部会長)に障害者自立支援法の「見直し」案を提示しました。同案は、障害者に重い負担となっている「応益負担」という考え方をあくまで堅持するものになっています。
障害者自立支援法(二〇〇六年四月施行)で導入された「応益負担」は、利用した福祉や医療サービスの原則一割を障害者・家族が負担する仕組みです。障害が重い人ほど、負担が重くなるため、障害者団体などから「応益負担廃止」を求める切実な声が大きく広がっていました。
ところが、「見直し」案は、利用者負担について、これまで二度にわたる利用者負担軽減措置(〇八年度までの時限措置)を「継続しつつ、必要な見直しを行うべきである」としただけ。「応益負担」を基本にする姿勢は変えていません。それを合理化する理由として、負担軽減措置によって「相当程度応能的な性格のものに変わってきている」ということを挙げました。
この表現に対して障害者部会では、委員から「軽減措置があるから大丈夫という流れだが、論点がすりかえられている」との批判が上がりました。
また、「見直し」案では「(障害者の)所得に応じてきめ細かな軽減措置が講じられてきていることについて、国民に明確になるようにしていくことが必要」などと、制度への批判が強いのは説明不足が原因であるかのような表現もあります。これには、別の委員から「ナンセンスだ。ごまかし、誤解を招く表現を残すことには反対」だとの意見が出ました。
政府・与党はこれまで「抜本的な見直し」などと口にしてきましたが、今回の厚労省の「見直し」案は、問題の根幹には手をつけないもので、国民の願いを裏切るものです。
「見直し」案は十五日の障害者部会で正式に決定されることになっています。
障害者共同作業所の全国組織「きょうされん」は十一日、「見直し」案について声明を発表。「障害をたとえ一割あるいは数パーセントであっても本人や家族の責任に帰する障害自己責任論という誤った考え方を残すものであり、断じて認めるわけにはいかない」と述べ、「応益負担は廃止するべきである」と改めて主張しました。(鎌塚由美)
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