2008年12月13日(土)「しんぶん赤旗」
主張
米軍再編予算
巨額の要求とはとんでもない
防衛省は米軍再編を本格的に進めるために、二〇〇九年度の軍事予算案に約一千億円もの巨額の支出を要求する方針を決め、財務省との事前調整に入りました。
米軍再編は、自衛隊基地への訓練の移転などが進んでいるとはいえ、核心ともいうべき沖縄の新基地計画や岩国基地(山口県)の再編計画は、地域の強い反対で立ち往生したままです。国民が認めてもいないのに、今年度(百九十一億円)の五倍もの予算を計上するのは重大です。社会保障費など国民生活予算を削減する一方で、巨額を米軍に投入する態度が国民の反発を買っているのは当然です。
異常な「別枠」方式
約一千億円のうち半分は在沖縄米海兵隊のグアム移転を理由にした、グアム基地建設関連予算です。米軍司令部や隊舎建設のための土地造成費です。今年度予算では調査費として約四億円がついていますが、建設費を計上するのはこれがはじめてです。
司令部要員など八千人の海兵隊員を沖縄から移転させても、戦闘部隊と基地をそのまま残す再編計画では、沖縄県民の苦しみをなくすことはできません。しかもグアム移転と一体で政府が押し付けようとしている沖縄での新基地建設計画は、騒音被害の拡大など「基地の痛み」を激増させるだけです。
七割もの県民が基地撤去を要求し、新基地計画に反対しています。基地の痛みをなくせという県民の強い願いに背を向けながら、日本の負担でグアム基地建設を進めるのは許されません。
米軍再編に要する経費は三兆円というのが米政府高官・軍幹部の説明です。日米合意では、沖縄の新基地建設と厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機部隊の岩国基地移駐は二〇一四年に完了するとされ、その他もそれ以前に作業が進むことになっています。こんご六年間で合意どおりに再編を進めれば、年平均でも五千億円が必要になる計算です。来年度一千億円を計上するのは、そのための助走であり、その後は数千億円にもなるのは避けられません。
巨額の米軍再編予算を確保する手法も見過ごせません。
防衛省は来年度の概算要求で約四兆八千五百億円を計上していますが、これとは「別枠」で再編予算を要求しています。これは政府方針にもとづいています。二〇〇六年の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」(「骨太方針」)が、軍事予算で対応できない場合は「必要な措置を講ずる」としているからです。
「別枠」を許せば軍事予算を激増させ、国民生活予算の圧迫にさらに拍車をかけることになるのは必至です。
戦争の足場にさせない
そもそもブッシュ政権がはじめた米軍再編は日本の防衛とは無縁です。日本の基地を足場にして、世界各地にいつでもどこにでも迅速に米軍部隊を送り、軍事介入できるようにするのが狙いです。米軍地位協定にも根拠のない「思いやり予算」と同類の米軍再編予算を増やすことに、何の道理もありません。
米軍再編を許さないことはアメリカの戦争態勢づくりを阻止することにつながります。それこそが戦争を放棄し紛争を平和的に解決することを理念とする憲法九条をもつ日本の役割です。
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