2008年12月10日(水)「しんぶん赤旗」

ホームレス急増

派遣切り

ボランティア 炊き出し不足で悲鳴

東京


 「ホームレス支援用の炊き出しのコメが足りません」。長野県南佐久郡で「信濃のフードバンク」としてコメや野菜などをボランティア団体に供給している「山谷(やま)農場」の藤田寛さん(38)=団体職員=から、悲鳴のような訴えが本紙に届きました。(菅野尚夫)


 「山谷農場」は、東京都内の新宿中央公園、上野公園、JR上野駅地下道、隅田公園の四カ所で路上生活者に炊き出し用のコメなどを一九九九年から提供してきました。藤田さんは「今年は注文が殺到して供給できない状況になっている」といいます。

 十二月は前年並みの二トンのコメを目標に農家に協力を要請しているものの、「それを上回る消費量の申し出がボランティア団体から寄せられている」というのです。

 今年一月から十一月までの集計で、五万四千食分のコメを提供してきました。前年度比で八千五百食分増加しています。

 新宿中央公園で炊き出しをしている団体は、十一月初旬に越年用の六百キロのコメを受け取っていました。

 しかし、足りなくなって、十二月に入って九百キロのコメを追加で取りに来たといいます。「越年用の炊き出し米がどのぐらい必要になるのか皆目分からないほどホームレスが増えています」と、藤田さんは顔を曇らせます。

 上野公園で毎週土曜日に炊き出しをしている団体の責任者は、二〇〇三年から炊き出しをしてきました。当時並ぶ人は、毎回四百人ほど。この二年間は、毎回五百五十人程度でした。責任者は「今年十一月になって七百人以上が並ぶようになって驚きました。新たにホームレスになった人が、確実に増えています」と証言します。

 毎週金曜日に南池袋公園でパンなどを配布している宗教団体の担当者も「今年になって百人から二百人以上は増えています」といいます。

 前出の藤田さんが「フードバンク」を始めたのは、高齢化した建築労働者が仕事を失い、大量にホームレスになっていった事態を目の当たりにしたからです。「何とかしなければ」と、仕事の傍ら活動してきました。

 藤田さんは「現在は非正規労働者の増加によって日本列島全体が日雇い労働者化した」と指摘します。

 十年前は、建築労働者が中心でした。今は「若者の派遣労働者から障害者まで広範な勤労市民がホームレスに追い込まれています」と話す藤田さん。「国の責任でセーフティーネットを構築することが急務です」と訴えます。

「仕事見つからない」

元派遣労働者

 東京都内で増えるホームレス。原宿でホームレス支援の雑誌『ビッグイシュー』を販売している神宮良和さん(38)=仮名=は、一カ月前まで派遣労働者でした。JR新宿駅西口の地下道で寝袋にくるまって寝ています。

 長崎県出身の神宮さんは、高校卒業後、愛知県に出て、「トヨタ系の下請け部品工場で働いたりしてきた。これまで十社以上の製造業の工場で働いた」といいます。

 「契約が切れると寮を出なければならない。何度かホームレスになったが、しばらくすると仕事は見つかった。でも、今回は違う。愛知県内では仕事がなく、上京したものの見つからずにホームレス生活です」と神宮さん。

 「仲間がいるので支えあって生きています。冬の寒さがこたえます。下りのエスカレーターに乗って自然とホームレスまで落ちていくのが派遣。もうすぐ四十歳。ぬけだしたい」



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