2008年12月6日(土)「しんぶん赤旗」

主張

日本の国連核決議

廃絶が中心にすわっていない


 日本が中心になってつくった「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決議」(五十八カ国共同提案)が、二日の国連総会で賛成一七三、反対四(米国、インド、イスラエル、北朝鮮)、棄権六(中国、パキスタンなど)で採択されました。

 核抑止・核固執と決別し、核廃絶を中心にすえる世界的流れがいよいよ大きくなっています。日本の決議が多数に支持されたのもそうした流れのあらわれです。問題は日本の核決議が核廃絶を中心にすえていないことです。唯一の被爆国である日本政府の姿勢が問われています。

段階的廃絶論の固執

 日本政府は今回、七月に行われた洞爺湖サミット首脳宣言をふまえて、核兵器の「削減」要求を新たに決議にもりこみました。核兵器廃絶要求が中心にすわっていないという批判をかわす狙いからです。アメリカをはじめ核兵器国が保有する核兵器の数はいまだにぼう大で、この削減自体は当然です。しかし、世界は核兵器廃絶を求めているのです。

 核兵器の削減要求という核兵器保有国が認める範囲内でお茶をにごすのはあまりにも卑屈です。核兵器保有国に対して核兵器の廃絶を求めない決議では、核廃絶の願いにこたえたとはいえません。

 今回の日本の決議は、核兵器保有国にも核兵器廃絶を求めていません。核兵器保有国が「核兵器廃絶の明確な約束」をした二〇〇〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書を「想起する」といいながら、決議本文で、核兵器保有国に約束通り核兵器廃絶にふみだせといわないのは、重大です。決議への賛成が最多になっても、核兵器廃絶を決議の中心にすえることを避けたのでは、核兵器廃絶の願いに反することに変わりはありません。

 日本の決議には、核兵器全面禁止条約の制定やそのための交渉などの実効的措置についていっさい言及はありません。全面禁止条約に向けた動きが強まるのを押しとどめる狙いがあることを示しています。

 それは日本政府が、非同盟諸国が提出した核弾頭とその運搬手段の質的改良、開発、生産、貯蔵の即時停止を核兵器国に求めた「核軍縮」決議やマレーシアなどが提出した「核兵器の威嚇と使用の適法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見の追求」決議に棄権したことでも明らかです。しかも、非同盟諸国案への投票理由は「現実的、段階的であるべき」だといい、マレーシア案では「段階的な進展を達成する措置を固めるべきだ」とケチをつけています。日本政府の狙いが、核兵器廃絶に向けた実効的措置に反対することにあるのは明白です。

核兵器廃絶実現のとき

 アメリカのオバマ次期大統領も「核兵器のない世界」を追求すると明言しているように、いま核兵器廃絶の流れを一気に加速すべきときです。日本は唯一の被爆国であり、その政府が核兵器廃絶運動の先頭に立つのは当たり前です。核兵器廃絶の流れに背を向けるのは大きな誤りです。

 核兵器廃絶をめぐる情勢は大きく変わっています。一日も早く核兵器をなくしたいという世界と日本の人々の願いにこたえ、核兵器廃絶を中心にすえた外交を進めることがいよいよ重要です。



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