2008年12月2日(火)「しんぶん赤旗」

主張

イラクとアフガン

「対テロ戦争」の見直し迫る


 米国のブッシュ政権が内外の世論を無視して強行した二つの戦争が、同政権の退陣と歩調を合わせるように転機を迎えています。イラクでは米軍の撤退期限を定めた地位協定が承認されました。アフガニスタンでも、対話による和平実現の障害となっている外国軍の活動に批判が強まっています。

「戦争はもう十分だ」

 イラクの米軍地位協定は、多国籍軍の活動を認めた国連安保理決議が今年末に期限切れとなるのに伴い、米軍駐留を今後三年間認めたものです。

 米国は撤退期限の明示に反対しましたが、協定はイラク側の主張を入れ、米軍が二〇一一年末までに完全撤退するとしています。イラクのマリキ政権と米国との交渉は、早期の外国軍撤退と主権回復を求めるイラク国民の世論を背景に進められ、野党議員も協定を国民投票にかけることを条件に多くが賛成に回りました。

 国民投票の行方や協定の現実的な効力には不明な点があります。しかし、イラクを他国への攻撃基地にしないこと、家宅捜索にはイラク側の同意を必要とすることなどを盛り込んだ協定は、外国軍の撤退こそがイラク国民の意思であることを示しています。

 一方、アフガンでも、和平を実現するためには武装勢力タリバンとの対話を通じて、政治解決を図るしかないとする主張が強まっています。実際、アフガン政府とタリバンとの間では、対話をめぐる接触がいろいろなチャンネルを通じて行われていることが伝えられています。

 カルザイ大統領はさらに、現地を訪問した国連安保理代表団に対し、国際社会がアフガン戦争の「終結時期」を明示するよう求めました。その背景には、外国軍の活動が和平への深刻な障害になっていることがあります。米軍・北大西洋条約機構(NATO)軍は「誤射」や「誤爆」で一般市民に多大な犠牲を強いています。アフガン政府の再三にわたる空爆の中止要請も踏みにじられてきました。

 アフガンNGO調整事務所のサイード・ラヒーム・サター氏は日本国際ボランティアセンター(JVC)が都内で開いたシンポジウムで、「誤爆」による一般市民への被害を告発し、アフガンでは旧ソ連軍の侵攻以来戦争が三十年近く続いており「戦争はもう十分だ」と語りました。同氏は対話による和平実現の重要性を強調し、日本をはじめ国際社会がその方向でこそ支援するよう訴えました。

許されない対米協力

 ブッシュ米政権の八年間が示しているのは、世界規模での「対テロ戦争」という路線はテロ問題を解決できないばかりか、主戦場とされたイラクとアフガンに出口のない戦争をもたらしたという現実です。米大統領選で有権者はこの路線を拒否する明確な審判を下しました。オバマ次期政権には、この国民的審判にもとづいた「変化」が求められています。

 日本政府は、イラクから航空自衛隊を撤退させる一方で、アフガン空爆を支援する給油活動を継続しようとしています。それは、アフガン国民が進めようとしている和平に逆行する道です。対話を通じた和平実現への国際支援を求めるサター氏らの声に耳をふさいで、米国への軍事協力に励むことは許されるものではありません。



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