2008年12月1日(月)「しんぶん赤旗」

主張

大量解雇

違法はまかり通らせない


 自動車や電機などの大企業が、輸出の落ち込みや景気の後退を理由に、大量解雇を始めたことが大きな社会問題になっています。

 大もうけを上げ高い配当を続けていて、今すぐ倒産するわけでもない大企業が、もともと低賃金で身分不安定な派遣労働者や期間労働者を切り捨てるような大量解雇を強行するのは、社会的な役割をかえりみない無法で不当なものです。しかもそのやり方は、現在の労働法規や裁判所の判例さえ踏みにじる違法なもので、断じてまかり通らせてはならないものです。

整理・解雇の「4要件」

 大企業が企業の都合だけでいつでも労働者を解雇していいものでないのは明らかです。短い期間に雇用契約を更新する期間労働者や契約労働者など「期間の定めのある労働契約」については、労働契約法でも、「やむを得ない事由がある場合でなければ」「契約期間が満了するまで」解雇「できない」と明記(第一七条)しています。

 不当な「首切り」解雇に反対する労働者のたたかいを背景に、裁判所の判例や労働関係の法律も、整理・解雇への規制を盛り込んできました。企業が経営上の都合を理由に労働者を解雇する場合、最高裁など多くの裁判所の判例は、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避の努力(3)人選の合理性(4)労働者との十分な協議―の四要件を満たさない限り、無効となることが確定しています。

 この「四要件」は、労働契約法でも第一六条に「客観的に合理的な理由」を欠き「社会通念上相当であると認められない」解雇は「無効」という内容になっています。

 こうした法律や判例に照らせば、来年三月期に六千億円もの利益を見込んでいるトヨタ自動車の大量解雇が、「客観的に合理的な理由」を満たしているといえないことは明らかです。「解雇回避の努力」や「労働者との協議」も十分尽くされているとはとてもいえません。解雇は無法なだけでなく違法であり、直ちに中止すべきです。

 整理・解雇の四要件は、正社員など正規の労働者だけでなく、期間労働者や派遣労働者など、非正規の労働者にも当然適用されるべきものです。生産を拡大するときは正規労働者を減らし、賃金の安い非正規の労働者を増やして大もうけしておいて、景気が悪くなれば非正規の労働者をいの一番に切り捨てるなどというのは、法律的にも道義的にも許されません。

 期間労働者を、契約期間中も含め全員解雇するなどというのは、日本共産党の志位和夫委員長がいすゞ自動車にも申し入れたように、明確に法律に違反しており、直ちに撤回すべきものです。

 いま働いている労働者だけでなく来年採用が内定していた学生も同じです。採用を内定した段階で、労働契約を結んだものと扱われます。大企業の違法な採用内定の取り消しは許されません。

雇用を守る政治の責任

 もちろん、違法でなければいいというものではありません。いま重要なのは、大企業に無法・違法な解雇をやめさせ、大企業の横暴勝手をただすとともに、国民の生活と雇用を守ることです。

 政府は日本経団連などに雇用対策を「要望」するとしています。「要望」にとどめず、大企業を指導して雇用を守る実効ある措置を取ることが政府の責任です。



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