2008年11月30日(日)「しんぶん赤旗」

主張

税制「抜本改革」

大企業奉仕の本音が出た


 経済財政諮問会議が二十八日、税制の「抜本改革」の大枠を取りまとめ、政府税制調査会も答申を麻生太郎首相に提出しました。政府が年内に取りまとめる「中期プログラム」の税制「改革」の骨格が浮かび上がっています。

 経済財政諮問会議は、「消費税を軸に」社会保障の財源を確保すると同時に、国際競争力の強化のために「法人実効税率の引下げ」を進めるとしています。

 消費税を増税して庶民に負担を押し付け、法人税を減税して大企業に奉仕する自公政治の本音が、はっきりと示されています。

崩れる所得再分配

 “消費税増税は社会保障の財源のため”という説明は口実にすぎないことが、あまりにも見え透いた方針です。

 麻生首相が財政の「中期プログラム」をつくると表明した記者会見(十月三十日)で、唯一具体的にのべた中身は「三年後」の消費税増税だけでした。「中期」の税制「改革」の方針を固める以上、企業献金の見返りに財界が要求している法人税減税を明記せざるを得ない―。本音があらわになるのは時間の問題でした。何より、経済財政諮問会議で「中期プログラム」の原案をまとめる主要メンバーは、トヨタ自動車や新日鉄の会長です。これでは、オオカミに鶏小屋の番をさせるようなものです。

 他方で政府・与党も、貧困と格差の拡大に対する国民の批判を無視できません。「中期プログラム」に「所得再分配機能の強化」を盛り込む方向です。政府税調は「審議で多くの意見があった」課題として、格差問題を踏まえた税制の「所得再分配のあり方の見直し」を答申に明記しています。

 それなら、大企業はすべてを転嫁でき、逆進性が強い消費税の増税に頼るべきではありません。

 内閣府の試算によると、現行の消費税率5%では、所得に対する税金と社会保険料の負担率は、かろうじて最低所得層より最高所得層のほうが高くなっています。しかし、消費税率を10%に引き上げた場合、負担率は逆転して最低所得層のほうが重くなります。

 自公政府が狙っているように消費税率を10%に引き上げるなら、税金と社会保険料の所得再分配機能は、ぼろぼろに崩れます。

 麻生内閣は、消費税が「社会保障給付に充てられること」によって、所得再分配が強化されると主張していますが、これは大きなごまかしです。予算の上では消費税は今でも社会保障に使うことになっています。「社会保障給付に充てられる」という建前は何も変わらず、消費税を増税すれば所得再分配が弱まるだけです。

逆立ち税制正してこそ

 形の上では消費税は社会保障に使われることになっていますが、実態は違います。一九八九年の消費税導入、九七年の増税以降も社会保障は改悪に継ぐ改悪でした。一方で法人税率は消費税導入前の42%から現在の30%まで一貫して引き下げられてきました。

 国民が払った消費税は大企業の減税に費やされたも同然であり、「中期プログラム」によると今後の消費税増税分からも巨額が大企業減税に回ることになります。

 「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」の逆立ち税制を正すことこそ必要な財源をつくると同時に所得再分配を立て直す道です。



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