2008年11月28日(金)「しんぶん赤旗」

いすゞの派遣・期間社員全員解雇

違法明白 解雇撤回せよ

志位委員長が要求


 1400人の派遣・期間労働者を12月末で全員解雇すると打ち出した、いすゞ自動車。撤回を求めた日本共産党の志位和夫委員長の申し入れ(26日)で、全員解雇が労働法令にも企業の社会的責任にも背いているという重大な問題点が浮かび上がりました。


会社側、答えられず

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(写真)いすゞ自動車本社に違法解雇を撤回せよと要求する志位和夫委員長(左)ら=26日、東京都品川区

 応対したいすゞの原田理志執行役員は、千四百人のほとんどが来年三月末までの契約途中の解雇であることを明らかにし、理由として「仕事が劇的に減った」と説明しました。

 雇用調整助成金(休業手当などへの助成)など解雇回避の努力もせず、労働者との協議もなく一方的に解雇を通告しただけであることも明らかになりました。

 これに対して志位氏は、有期雇用の途中解雇について労働契約法一七条一項(別項参照)で、企業が倒産の危機にあるなど「やむを得ない事由」をのぞいて禁止していることを指摘しました。

 判例では、会社の維持・存続のため人員削減が必要であることなど「整理解雇の四要件」(別項参照)を満たしていない解雇は無効とされています。

 志位氏は、いすゞは「減益」といっても六百億円の経常利益を見込み、株主配当を十七億円も増やす計画(来年三月の決算見通し、十一月五日発表)であることを指摘し、「一方で全員解雇しながら一方で配当を増やすのでは、『やむを得ない事由』とはいえず、違法解雇だといわざるを得ない。撤回すべきだ」と求めました。

 いすゞ側は、「仕事が減っているので解雇せざるを得ない」と繰り返すだけで、具体的な指摘には答えることができませんでした。

 答えに窮していすゞ側は、「『(臨時従業員)就業規則』では、『会社の都合により雇用の必要がなくなったとき』には契約期間中でも解雇できるとなっている」と釈明しました。

 志位氏は、労働契約法や最高裁判例では、就業規則は労働法令に従った合理的な内容でなければならないとされているとのべ、「会社の都合でいつでも解雇できるとしている、いすゞの就業規則は法令に反している」と指摘しました。いすゞ側は「法令を見定めてやっているつもり」としか答えられませんでした。

正社員化の約束をほご

 もともと解雇を通告された非正規労働者は、偽装請負から、派遣・期間労働者になった人で、その多くが四年から六年間も働いている人です。

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(写真)解雇予告通知書

 三月に小池晃参院議員と塩川てつや衆院議員が、偽装請負から期間従業員になった労働者の雇い止め中止と正社員化を求めたさい、いすゞ側は、派遣をなくして正社員と期間労働者にしていくことを表明していました。

 今回の申し入れで小池氏が「正反対のことをやっている。約束違反ではないか」とただしたのに対し、いすゞ側は「仕事がない」と繰り返すだけでした。

 志位氏は、「経過からみて本来なら正社員にするのが当然だ。全員を解雇するというのは企業の社会的責任を放棄するものだ。長年働いてきた人を調整弁のように切り捨てるのは許せない。企業の社会的責任が問われる」と批判しました。

寒空に放り出すのか

いすゞ側言明
 寮に居住可能/再就職を支援/誠意もち協議

 志位委員長は、党本部に寄せられた、いすゞ労働者の切実な声を読み上げて、「歳末のこの寒空に放り出して、大量のホームレスをつくるつもりか」と厳しく問いただしました。

 志位氏が紹介したメールには、次のような思いがつづられています。

 「いすゞで五年以上働かせてもらいました。今回の突然の解雇で寮を出されたら、住む家もなく、住所不定で、外で寝なければなりません。十二月の解雇手続きを断りたいのですが、できるでしょうか。十二月の解雇で、大量に住所不定者が出ると思います。いすゞは五年も働かせてくれたのに、最後は紙切れ一枚でこんなことをいわれて、悲しいです。いすゞは、死人まで出ないとわかってくれないのでしょうか。冬に外で寝るのは、死ねということなのでしょうか」

 「解雇手続きをさせられます。このまま辞めさせられたら、寮を出されたら死んでしまいそうです。契約した三月まで、なんとか働きたい」

 志位氏の指摘に対して、いすゞ側は、(1)「来年三月末、契約期間満了までは寮に住めるようにする」、(2)再就職について「最後までフォローする」と答えました。「次の職が決まるまでは寮への滞在を認めてほしい」「いすゞの責任で次の職をあっせんしてほしい」という労働者の要求にこたえる回答です。

 志位氏は、人事担当者に呼ばれた労働者が解雇を通告された後、顔色が真っ青になり、口もきけないほど落ち込んでいるという訴えを受けたとのべ、「働き続けたい」「解雇手続きを断りたい」という労働者との協議をつよく求めました。

 いすゞ側は、「申し出があれば、誠意をもって話し合いをする」と答えました。一方的通告で解雇がすでに決定したものだと思わされている労働者に対し、解雇撤回・雇用確保を求めるたたかいへの激励となっています。


■労働契約法17条1項
 「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」

■整理解雇の四要件
 整理解雇については、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避の努力(3)人選の合理性(4)労働者と十分な協議―を満たさない限り解雇無効となることが判例で確立しています。



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