2008年11月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

大阪の学力テスト問題

競争あおる知事の異常な態度


 文部科学省が全国いっせいにおこなった学力テストの結果を、市町村や学校単位で公表するかどうかが全国各地で大きな問題になっていますが、その発端をつくった大阪府で、結果公表を機に、学力テストの順位をあげるための異常な施策が進んでいます。

ルール違反の結果公表

 大阪府の橋下徹知事はこの十月、全国ではじめて学力テストの市町村別のデータ開示に踏み切りました。きっかけは大阪府の平均点が二年連続で全国平均を下回ったことでした。橋下知事は「このざまは何だ」と教育委員会に罵声(ばせい)をあびせ、九月には「教育非常事態宣言」をだし、学校教育へ介入する姿勢をあらわにしました。

 「目的のためには手段を選ぶな」「プロなら言い訳をするな。結果をだせ」と講師が檄(げき)をとばし、下を向く校長や管理職たち―。十一月六日に開かれた大阪府教委の研修会での一コマです。橋下知事のとった施策の一つが、国も競争をあおるとの理由で禁じていた学力テストの市町村別の結果公表です。

 橋下知事は「非公表なら予算をつけぬ」と市町村教育委員会を脅かし、結果公表を迫りました。その一方で、「予算の裏付けのために」といって府教委にテスト結果を提出させ、一部の市町村をのぞいて勝手に公表してしまったのです。これには塩谷立文部科学大臣も「全くのルール違反」といわざるをえませんでした(十一月十九日の衆院文科委で、日本共産党の石井郁子議員の質問に対して)。

 市町村別や学校別の結果公表は、全国の九割以上の教育委員会も反対しています(文科省調査)。公表すべきではありません。

 橋下知事は大阪府教委とともに「大阪の教育力向上に向けた緊急対策」を発表しました。その中身は、「基礎基本を徹底するとともに『PISA型学力』で日本一をめざす」とし、「百マス計算」や「反復練習」を強調、携帯ゲーム機を二千万円かけて購入し学校教育で使うというのです。多様でなければならない教育現場に、行政が特定の教育方法、特定の商品をおしつけるものです。来年二月には、四月実施の全国テストに向けた模擬テストを計画しています。「過去問」を繰り返しやらせようというのです。

 市町村等への予算配分に格差をつけようとしていることも重大です。府は「学力向上」と称して三十億円の基金をもうけ、五十校を重点指定するとともに、自治体の取り組みを査定し、それに応じた「交付金」を支給するといいます。今後の施策の素案には、五カ年で全国学力テストの「全国平均を上回る」「『無回答率』ゼロの実現をめざす」と数値目標まで盛り込まれています。

 塩谷文科相も石井議員に「(全国学テの)趣旨、目的としているところに反するところがある」と認めざるをえませんでした。

全国学テは廃止しかない

 大阪府のような点数競争は、程度の差こそあれ、全国各地でおきています。日本共産党が繰り返し指摘してきたように全国学テを行えば、順位を競い、テストの点数を上げるための競争の教育に拍車がかかることは必然です。

 過度の競争は、子どもたちから、じっくり考え、学ぶ楽しみを奪います。全国いっせい学力テストは廃止以外に道はありません。


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