2008年11月27日(木)「しんぶん赤旗」
主張
財政審意見書
経済危機に油を注ぐ骨太路線
財政制度等審議会(会長・西室泰三東京証券取引所会長)が、二〇〇九年度予算に関する建議(意見書)を取りまとめました。
アメリカの金融投機のバブルが崩壊し、「外需・輸出頼み」の日本経済は深刻な景気悪化に直面しています。家計を犠牲にして一部の輸出大企業を応援し、バブルで膨らんだアメリカの過剰な消費に依存する、「構造改革」の根本欠陥があらわになっています。
景気悪化からくらしを守り、内需主導の経済へ体質改善を図ることは来年度予算の大きな課題です。しかし、財政審が強調したのは「構造改革」への固執です。
本末転倒の財政運営
意見書は小泉内閣の「骨太方針」(二〇〇六年版)を維持するよう求めています。また、政府・与党が年末に決める「中期プログラム」で、消費税増税を意味する「安定財源の確保」を明確にするよう要求しました。
〇六年版の「骨太方針」は社会保障の自然増を毎年二千二百億円も削る一方で、グアム基地建設を含む米軍再編のための三兆円もの出費を“聖域”扱いにしました。社会保障費の抑制を掲げながら、税制では社会保障の財源を口実にした消費税増税、国際競争力の強化の名目で大企業・大銀行向けの減税を狙っています。
内需の要である家計を痛めつけて大企業に奉仕し、アメリカいいなりに軍事費を積み上げる財政運営の方針です。
こんな本末転倒のやり方が、先進国の中でもアメリカと並んで低い水準の社会保障を一段と後退させてきました。その結果、「医療崩壊」「介護難民」「年金空洞化」など、くらしを支えるはずの社会保障が生活を壊し、切実な不安を生み出しています。内閣府の調査によると生活不安を感じている人は過去最悪の七割に達しています。
年金改悪や後期高齢者医療制度の導入、定率減税の廃止や高齢者増税など、家計には息もつけないほどの負担増と給付カットです。ところが、大企業には法人税率引き下げで四兆円、連結納税制度と研究開発減税で一兆円、合わせて年間五兆円の減税です。一九九七年の消費税増税など九兆円の負担増以来、低迷が続く家計消費を「構造改革」がしんから冷やし、外需頼みの体質に輪をかけたことは明らかです。
求められているのは「構造改革」と「骨太」路線の抜本転換にほかなりません。財政審は先進国最悪の財政赤字を吹聴しています。しかし、「骨太」路線に固執すれば、不況をいっそう深刻化・長期化させ、税収の落ち込みと「景気対策」の歳出増を招いて、財政赤字も増やす悪循環に陥ります。
破たんした数字合わせ
国と地方の借金は、九六年にはGDP(国内総生産)の94%でしたが、消費税増税を強行した九七年以降は急上昇し、〇五年には170%を突破しました。くらしを痛めつける負担増の数字合わせは完全に破たんしています。
「構造改革」の旗振り役の財界が多数の委員を送り込むような審議会の出る幕ではありません。
十五日のG20(金融サミット)で麻生太郎首相は、世界に向かって「外需依存度の大きな国における自律的な内需主導型成長モデルへの転換」を提案しました。
外需から内需への抜本転換がもっとも必要なのは日本です。