2008年11月23日(日)「しんぶん赤旗」
主張
温暖化対策
これでは国際責任が果たせぬ
地球温暖化対策を話し合う国連の会議(COP14)が十二月一日からポーランドのポズナニで開かれます。二〇一二年に終了する京都議定書第一約束期間に続く対策の枠組みづくりが、ゴールとなる来年末のCOP15に向けて本格的に行われます。
この間相次いで発表された統計は、日本が京都議定書の目標からますます遠ざかり、世界の流れに逆行していることを裏付けています。世界が直面する待ったなしの課題で国際責任を果たそうとしない政府の姿勢を、一刻も早く正さなければなりません。
排出量は過去最悪
京都議定書で、日本は一二年までに温室効果ガスの排出量を一九九〇年水準から6%削減するよう義務付けられています。しかし、環境省が発表した〇七年度の排出量(速報値)は過去最悪で、九〇年度比で8・7%も増えました。
政府は排出量の八割を占める産業界での削減について、もっぱら財界の“自主努力”に任せてきました。日本経団連の「自主計画」は排出量を「九〇年度レベル以下に抑制するよう努力する」というまったく不十分なものです。
〇七年度の「自主計画」実績では、発電所や工場など産業・エネルギー転換部門(三十四業種)の排出量は九〇年度比1・3%増加しました。財界の“自主努力”に任せていては不十分な自主目標の達成すらおぼつかないことを示しています。
排出量増加の最大の要因は原子力発電頼みの電源政策にあります。〇七年の排出量増加分の88%を発電が占めています。災害や事故で原発の稼働率が低下し、石炭による火力発電に依存せざるをえなかったためです。エネルギー政策を抜本的に改め、自然エネルギーの普及を本格的に進めることが迫られています。
国連気候変動枠組み条約事務局の発表によれば、工業国四十カ国の〇六年の排出量は九〇年比で4・7%減少しました。日本が5・3%、米国が14・4%も増やした一方で、ドイツは18・2%、イギリス15・1%、フランス3・5%と減らしたことが注目されます。
これらの国では、政府が野心的な目標を定め、産業界と実効性のある削減の協定を結び、排出量取引や環境税などの制度を整備し、自然エネルギー普及などの手立てをとっていることが削減の成果につながっています。
政府は京都議定書に続く協定への中期目標をいまなお示さないでいます。米国が新協定に参加しないなら日本も不参加との方針さえとっていました。
様変わりの交渉へ
交渉は様変わりしそうです。京都議定書を離脱し削減に抵抗してきた米国で、オバマ次期大統領が「温暖化対策で指導力を発揮する」と表明し、「二〇年までに九〇年水準に引き下げる」との中期目標と、「五〇年までにさらに80%削減する」との長期目標を示したからです。「厳しい年次目標を設定する」とし、エネルギー政策の転換や一国レベルでの排出量の上限を定めた排出量取引制度を設立する方針も示しています。
日本も国際的な枠組みづくりとその実行に貢献すべきことは言うまでもありません。そのためにも、今こそ京都議定書の責任を果たす抜本対策をとることです。