2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」

湾岸戦争症候群

参戦兵4人に1人症状

米独立委員会が報告書


 【ワシントン=西村央】一九九〇年から九一年にかけての湾岸戦争に参加した米軍兵士が集団的に記憶障害や慢性疲労などになっているいわゆる湾岸戦争症候群について、米独立委員会は十七日、報告書をピーク退役軍人長官に提出しました。報告書は症候群の原因を明示し、被害が参戦兵士の四分の一にあたる十七万五千人に達するとしています。


 今回の報告書は、湾岸戦争症候群について各分野の科学者の研究や政府の調査の双方を取り入れた初めてのもので、四百五十ページ以上に及んでいます。

 広範囲にわたる科学的調査は「湾岸戦争症候群は実態的なもので、湾岸戦争従軍中に神経毒性のある化学物質を浴びた結果であると、確実に指摘できる」と因果関係にも触れています。

 問題となった化学物質としては、神経ガスから兵士を守るために投与された医薬品「臭化ピリドスチグミン」と、広範囲に過剰使用された殺虫剤(害虫忌避剤)を主要なものとして挙げています。

 他の原因も排除できないとし、低濃度の神経ガス、油煙、大量の予防接種、神経毒の複合汚染を挙げ、イラク軍の弾薬庫を破壊した際に漏れた神経ガスにさらされた可能性もあるとしています。

 また、湾岸戦争での軍事行動が目覚ましい成功を収めたとする一方で、慢性的な兵士の健康被害については、長期間にわたって十分に理解されず、無視されたり、矮小(わいしょう)化されたと問題点を挙げています。

 湾岸戦争症候群の症状としては、記憶障害、持続的な頭痛、不意の疲労感、全身的な痛みが複合したものとし、慢性的な消化不良や呼吸器の症状、発疹(ほっしん)も伴うとしています。

 委員会で責任者を務めたジェイムズ・ビンズ元国防総省副次官補は、今回の報告書について、「湾岸戦争従軍兵士の健康改善と、今後こうした症候群を防ぐための計画作りの材料を新政権に提供するものである」と語っています。


 湾岸戦争 一九九〇年八月二日にイラクが隣国クウェートに侵攻したことから、九一年一月十七日に米軍主導の多国籍軍がイラクを空爆し開戦。二月二十四日から地上戦が始まり二十六日にクウェートが解放されました。四月三日の国連安保理決議六八七に基づき十一日に停戦が発効。日本政府は、戦費として百三十五億ドル(当時のレートで約一兆七千億円)を支出しました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp