2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」
主張
連続殺傷
断じて許されない凶行
さいたま市で元厚生省(現厚生労働省)事務次官の夫婦が殺害されて見つかり、東京・中野区でも元同省次官の妻が刺され大けがを負いました。警察では二つの事件の関連性も視野に入れ、捜査を進めています。
被害者が元厚生省次官とその家族だからというだけで、厚生官僚を狙った「テロ」とは断定できません。しかし連続殺傷事件には、犯行の手口や二人の元次官がいずれも年金行政に携わっていたなど共通点もあります。凶行は許されないことであり、「テロ」かどうかを含め徹底した捜査と真実の追及が不可欠です。
厚生労働行政は、いわゆる「消えた」年金記録の問題やお年寄りを差別する後期高齢者医療制度の導入などで国民の批判を浴びてきました。しかし、行政を批判することと、当時の担当者を暴力で傷つけることとはまったく性格が違う問題です。暴力による「テロ」は言論による正当な批判を無意味にする点でも、絶対に許されないものです。
これまでも日本共産党幹部など政治家や高級官僚、財界人などをねらったテロ事件が繰り返されてきました。昨年四月には伊藤一長長崎市長が選挙中に銃撃され死亡する最悪の民主主義破壊事件もおきています。連続殺傷事件を徹底捜査するとともに、再発を防ぐため、無法な暴力の根を絶つことが不可欠です。
「政局」優先
国民そっちのけの迷走ですか
アメリカ発の金融危機はいよいよ実体経済に波及し、日米欧同時不況の様相を濃くしています。国内でも雇用の削減や消費の低迷が大問題になっています。
ところがそんな時に、自民、民主両党が、迷走を続けています。麻生太郎首相と自民・公明の与党は、選挙の“目玉”として打ち出した「定額給付金」をめぐって迷走し、逆に国民からも総すかんを食って、第二次補正予算案提出のめどさえ立ちません。一方、民主党は、国会での党首討論を避け続けた小沢一郎代表が、突然、自民に党首会談を持ちかけ、補正予算案を提出しなければ参院での法案の採決には応じないと言い出すしまつです。会期の大幅延長も取りざたされています。国民の暮らしそっちのけの「政局」優先の対応に、マスメディアからも批判が上がっているのは当然です。
麻生内閣は政権を発足させて以来、自公政権の延命を最優先の党略にしてきました。当初ねらった早期解散のもくろみが崩れ、「給付金」でも所得制限などをめぐって迷走したあげく、結局は地方に丸投げしました。臨時国会の会期があと十日ほどになっても、補正予算案を提出するともしないとも確約できません。
これにたいし民主党は当初、早期解散のためには反対法案でも審議に協力するという態度を取り、第一次補正予算に賛成、インド洋での自衛隊による給油を延長する法案などの衆院通過にも協力しました。ところが麻生首相が解散に踏み切らず思惑が破たんすると、今度は突然「対決」を言い出す首尾一貫しない態度です。政府が補正予算案を提出しなければ給油延長法案の採決に応じないというのは、予算案の中身を問題にしない点でも、関係のない給油延長法案の採決に絡める点でも、二重に道理がありません。
麻生首相は「政局より政策」といい続けてきましたが、自民と民主はいずれも「政策より政局」を優先し、「迷走同士のぶつかり合い」を演じているのが今の事態です。民主党が「政局」を最優先するのも、結局は自民党と基本政策で対決軸を持たない同質・同類の党だからです。経済政策でも、大企業の利益優先を正す立場はありません。
日本共産党が「緊急経済提言」でも要求したように、「カジノ資本主義」の破たんによる経済悪化のツケを国民に押し付ける大企業の雇用の切り捨てや下請け中小企業への圧迫、大銀行による貸し渋り・貸しはがしなどをやめさせることは一刻の猶予もありません。消費が低迷し、輸出も落ち込んで日本経済はすでにマイナス成長に転落しています。外需頼みから内需主導へ日本経済の抜本的な体質改善も不可欠です。
世界的な金融危機や日本経済の危機について徹底した審議を求めるとともに、雇用、中小企業、農業など国民生活のあらゆる分野で暮らしを守るたたかいを発展させることが急務です。国会論戦と国民の運動で麻生内閣を追い詰めてこそ、解散・総選挙を実現し、政治の中身を変えていく道を開くこともできます。