2008年11月17日(月)「しんぶん赤旗」

マスメディア時評

消費税以外の道なぜ探らない


 発足から一カ月半たった麻生太郎内閣の、国民にとって見過ごせない動きのひとつが消費税の増税です。「三年後には引き上げをお願いしたい」とか、「二年後には法案を出す」とかの首相の発言には、国民の反対にもかかわらず消費税増税を推し進める、恐るべき執念がこめられています。

 見過ごせないのは、そうした動きに連動して、巨大な部数を持つ全国紙の論調から消費税増税反対がすっかり姿を消したことです。

批判どころかけしかける

 たとえば、麻生首相が「三年後」の増税を明言した、十月三十日の追加経済対策発表にあたっての各紙の社説(主張)がそうです。

 「朝日」は「恐れず負担増を語ったのは歓迎」、「読売」は「消費税引き上げの勇断」、「毎日」は「従来になく踏み込んだ」、「日経」は「『言い訳』で終わらせてはならない」、「産経」は「意味は大きい」。そろいもそろって歓迎し、増税をけしかける立場です。

 その五日後の十一月四日、政府の「社会保障国民会議」が消費税の大幅増税を持ちだした際の各紙の論調も同じです。

 「朝日」は「社会保障の財源問題に正面から取り組む姿勢を示(した)」と評価し、「読売」も「消費税以外に財源はない」との前提で「議論を提起した」と持ち上げます。「産経」も「消費税率増の具体案示せ」と前のめりで具体化を迫っています。三日遅れで社説を載せた「毎日」も、増税に肯定的な評価です。

 政府と自民党の税制調査会は先週から、消費税の増税を含む中期的な「税制プログラム」の検討を本格化させました。それについても「読売」は「増減税のメリハリが重要だ」、「日経」は「消費税の将来像を明確に示す時期にきている」と、消費税を含む増税の検討を督促しています。「毎日」も「消費税上げは前提でない」というだけで、増税反対ではありません。

 全国にさまざまな立場の多くの読者を持つ全国紙が、そろいもそろって消費税増税を支持するというのは異常です。少なくとも、消費税増税のように読者・国民の間で意見が分かれる問題については両者の意見をきちんと伝え、消費税以外の財源の選択肢も示して判断材料を提供することが、言論・報道機関としての役割というべきものでしょう。

社論として増税を推進

 「朝日」が消費税増税支持を鮮明にしたのは、昨年末からことしはじめにかけ「希望社会への提言」のタイトルで連載した社説「消費増税なしに安心は買えぬ」(昨年十二月九日付)以来です。二月には同じシリーズのなかで、年金問題の財源は「税と保険料を合わせて」まかなう考えを打ち出します。相前後して「読売」は四月に「年金改革 読売新聞社の提言」と題し、消費税を目的税化した「社会保障税」の創設を提案します。「日経」もそれに先立つ一月、社内に設けた「研究会報告」の形で、基礎年金は全額消費税でと提案します。「読売」の案でも、「日経」の案でも、消費税の税率はいまより5%引き上げて10%にするという大変な負担増です。

 いったいこれらの全国紙は、「提言」など文字通り「社論」として、消費税増税を進めるつもりなのか。もちろんだからといって、多様な意見を伝える報道機関としての役割を投げ捨てていいということにはなりません。

 麻生首相や全国紙は消費税以外に社会保障の財源はないように言いますが、日本共産党は逆進性が高い消費税は社会保障の財源にふさわしくないことを批判するとともに、五兆円に上る軍事費やムダな高速道建設、政党助成金などにメスを入れ、大企業や大資産家向けの行きすぎた減税を正せば、社会保障を含め国民のための財源は十分まかなえることを明らかにしています。

 アメリカのオバマ次期大統領でさえ、中堅所得層向けの減税は大企業への行きすぎた減税をやめることでまかなうと提案しています。その気になれば、巨大な組織を持つ日本の全国紙にも、こうした対策はすぐ思い浮かぶはずです。

 軍事費の増額を要求したアメリカや広告主である大企業に遠慮して、消費税以外の財源対策が言い出せないのだとしたら、言論機関として情けないことです。大企業はまだまだ大もうけを続ける一方、国民の生活苦は深刻さを増しています。全国紙もそろそろ、広告主などの縛りから抜け出すときではないでしょうか。(宮坂一男)


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