2008年11月16日(日)「しんぶん赤旗」

迷走 給付金


 麻生内閣が追加経済対策の“目玉”に位置づけた「定額給付金」の迷走が止まりません。政府・与党内の意見すらまとまらず、配る自治体の側からも「白紙撤回」の声が出るほど。受け取る側の国民からも総スカンです。税金を使った“選挙買収”は白紙撤回以外ありません。


閣内の乱れ 止まらない

 「みなさまの疑問にお答えします」。自民党は十四日、定額給付金についてこんな文書を発表。所得制限の判断を市町村に委ねた点について、「『自治体に丸投げ』との批判があります」と認めざるを得ませんでした。

 同じ日、党役員連絡会では、笹川尭総務会長が同じ点について「おかしい。国がやることだから、地方が迷わないよう、しっかりしてほしい」と注文。河村建夫官房長官が閣僚に発言を注意するよう要請したにもかかわらず、鳩山邦夫総務相は「基本的には一律支給」と所得制限に反対する姿勢を表明するなど、閣内の乱れはおさまりません。十四日の政府税調でも異論が噴出しました。

 麻生太郎首相は「(隣の)町長同士で話し合って決めればいい」(十五日)と相変わらず統治能力欠如の無責任ぶりです。

 内閣府試算でもGDP(国内総生産)押し上げ効果はわずか年間0・1%と景気対策としての効果ものぞめません。しかも、実施には、第二次補正予算案だけでなく関連法案(特別会計法改定)が必要で、年度内成立もきびしい日程です。

市町村混乱 「国が滅ぶ」

 「無責任」「いいかげん」「言語道断」―。政府・与党が所得制限を設けるかどうかの判断を市町村に「丸投げ」したことに対して、市町村からは批判と当惑の声が相次いでいます。

 「混乱や市民間の感情的な対立を引き起こす可能性がある」(上田文雄札幌市長)「このままどんどん進むと国が滅ぶ」(松浦正人山口県防府市長)との声まで出ています。

 「支給にかかる事務は非常に煩雑かつ膨大なものになると予想される」―十七政令指定都市の市長で構成する指定都市市長会は十四日、深刻な懸念を示し、政府に対して「制度の根幹部分」を明確にするよう求める意見を提出しました。

 所得制限を設けなくても、世帯構成の把握や本人確認、振り込みに加え、窓口に住民が殺到するなど混乱も想定されます。年度末は市町村の繁忙期と重なり、転居者への「二重支給」や「支給漏れ」を防ぐ対策も必要になります。

 「毎日」十五日付の五十一市区調査では、給付金の支給にかかる期間について、秋田、高知両市が「半年」と回答。二カ月以上の期間を示した回答が十五市にのぼるなど「年度内にすべての国民に給付金が行き渡るのは絶望的な情勢」としています。

国民・メデイア 総スカン

 「そんなお金があるなら返済不要の奨学金制度創設に充ててほしい」(「朝日」十四日付「声」欄)

 新聞・テレビ各社が今月上旬に行った世論調査では定額給付金について、「評価しない」58・1%(共同通信社)、「必要な政策だとは思わない」63%(「朝日」)と回答。「評価する」「必要だ」は二―三割台にとどまりました。景気対策に役立つかとの質問にも「思う」19・8%に対し「思わない」74・4%(NNN世論調査)と圧倒的です。

 マスメディアも「支離滅裂な施策はやめよ」(「毎日」十二日付社説)と主張。地方紙社説は「混乱の種をばらまくのか」(新潟日報十三日付)、「白紙も視野に国会で論議を尽くすべきだ」(愛媛新聞十三日付)などと批判しています。

 国民からもメディアからも総スカン状態です。


配る前から詐欺予想

写真

 「定額給付金の給付をよそおった『振り込め詐欺』や『個人情報の詐取』にご注意ください」。総務省ホームページで「重要なお知らせ」として、こんな注意を載せています。(写真)

 現金支給となる場合は、盗難やひったくりが懸念されます。

 実施前から、犯罪や混乱を予想しなければならない制度とは一体なんなのか、問われています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp