2008年11月15日(土)「しんぶん赤旗」

主張

税制調査会

「逆立ち税制」を正してこそ


 与党に続いて政府の税制調査会が十四日、議論を再開しました。麻生太郎首相が表明した消費税増税を含む「中期プログラム」を年内に取りまとめます。

 麻生首相は十月三十日の記者会見で、「経済状況を見た上で、三年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と表明しました。最近の記者会見では「経済情勢が二年でうまくいったら、その時に(法案を)出す」と、二年後にも消費税増税の法案を国会に提出する考えを明らかにしています。

庶民は低福祉・高負担

 政府・与党の消費税増税の最大の口実は「社会保障の財源」です。

 首相は繰り返しのべています。「中福祉でありながら、低負担を続けることはできない」

 社会保障国民会議の座長をしている吉川洋・東大大学院教授は、「『中福祉・中負担』の立場からすると現在は、やはり負担が足りない」と指摘しています。

 政府・与党の認識は、現在の日本の社会保障と負担の姿は「中福祉・低負担」、つまり社会保障はある程度充実しているのに、国民の負担は少ないということです。

 消費税増税で「中福祉・中負担」に持っていく政府・与党の方針は、社会保障の水準は上げないが国民の負担だけは大幅に増やすという宣言にほかなりません。これは、現在の日本の社会保障の水準から見ると、許しがたい暴挙です。

 日本の社会保障が、先進国の中でも低い水準であることはOECD(経済協力開発機構)の調査でもはっきりしています。国民への社会保障の給付は、GDP(国内総生産)比でイギリスが22・4%、フランス28・5%、ドイツ28・8%に対して日本は17・4%にすぎません。アメリカ(15・2%)と並んで先進国では最低水準の「低福祉」国です。

 日本の「国民」負担はアメリカとともに先進国の中では低いとされています。しかし、この種の統計の「国民」の中には個人だけでなく企業も含まれます。重要なのは、日本の大企業の負担は低く庶民の負担は重いという実態です。

 厚労省によると、日本の労働者の賃金に対する社会保険料負担は12%で、アメリカ7・7%、フランス9・7%、スウェーデン7%よりもかなり重くなっています。

 他方、日本の企業の社会保険料負担は12%で、32%のフランス、27・2%のスウェーデンの半分以下にとどまります。アメリカの社会保険料は10・3%と低いものの、従業員のための民間医療保険の負担を含めると、企業負担は日本より約5%高くなります。

 法人税の重さは大企業優遇税制があるため、税率だけでは測れません。国立国会図書館の専門家がGDP統計を使って試算したところ、アメリカの企業の法人税負担が三割程度に対して日本は二割台前半と、相当低い水準です。

消費税は最悪の選択

 一方で日本の低所得層は課税最低限が国際的にも異常に低いなど、OECD諸国の中でも重い税負担を強いられています。

 こんな日本の実態に照らせば、大企業は実質的に一円も負担しなくて済み、低所得層ほど所得に対する負担の割合が重い消費税の増税は最悪の選択です。応能負担の原則に立ち返って、大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」を正すことこそ必要です。


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