2008年11月5日(水)「しんぶん赤旗」

韓国の米軍射爆場

周辺住民 高い自殺率

4人に1人 精神被害


 韓国の米軍演習場の周辺住民の自殺率が異常に高いとの調査報告書がこのほど発表されました。多くの住民が、射爆による死亡や負傷、爆撃音、住居の損壊などによる恐怖から精神的な疾患を抱え、適切な治療を受ける機会のないまま死を選ぶ住民が後を絶たないといいます。


地図

 調査は韓国の民間研究機関「労働環境健康研究所」が実施し、京畿道・華城市に一九五一年から二〇〇五年まであった梅香里射爆場の周辺住民が対象。約千八百人の梅香里住民のうち五百人を面接調査した結果、24・8%にあたる百二十四人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安傷害や、うつ病と診断されました。

 調査で確認できた自殺者数は五十六人。毎年ほぼ一人が自殺したことになります。韓国の自殺率(十万人あたりの自殺者数)は、最初の統計が発表された一九八三年が九・五、二〇〇七年が二十四・八。年によって差があるため、梅香里住民の自殺率との単純比較はできませんが、平均すると梅香里住民の自殺率は全国平均の約五倍になるといいます。

 報告書は「五十四年間にわたる米軍の爆撃と射撃による騒音、人命と財産の被害、精神的被害が梅香里住民の精神健康を悪化させ、高い自殺率となって表れている」とし、「高い自殺率は現在進行形であり、今後も続くと予測される」と指摘します。

 これ以上の自殺者を出さないための予防策として、報告書は(1)梅香里の全住民を対象とした詳細な調査、健康診断、治療(2)自殺予防プログラムを含む精神健康管理プログラムの推進(3)他の演習場・基地周辺の住民を対象とした調査―を提言しています。

 射爆場閉鎖運動の先頭に立った「梅香里住民対策委員会」は声明を発表し、在韓米軍の司令部の公式謝罪と、米軍と韓国政府による共同の対策を求めました。声明は「射爆場ができるまで、梅香里はその名の通り梅の香りがただよい、海の幸に恵まれていた。爆撃は終わったが、精神的被害が治癒されるまでには、五十四年の歳月と同じくらいの努力が必要だろう」としています。(面川誠)


 梅香里射爆場 正式名称はクーニ演習場。朝鮮戦争中の一九五一年、韓国・京畿道の華城郡(現在の華城市)の海岸と近海に設置された米軍の実弾射撃・爆撃訓練場。在韓米軍だけでなく、グアム、沖縄、米本土の爆撃機も使用。訓練のない土曜と日曜だけ漁業が認められました。二〇〇〇年に起きた住民が負傷する事故をきっかけに閉鎖を求める運動が高揚。二〇〇五年に閉鎖されました。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp