2008年11月3日(月)「しんぶん赤旗」
中国 農村戸籍改革
都市との格差是正へ
社会保障の向上が課題
【北京=山田俊英】中国政府は、都市と農村で別だてになっている戸籍制度を一本化し、格差を是正する改革を徐々に進めています。既に戸籍の統一を独自の決定で実施した省や市もあります。ただ、社会保障を含め農村住民が都市住民と平等な権利を得られるようになるには、まだ時間がかかりそうです。
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一九五〇年代につくられた戸籍制度は、農村から都市への移住を厳しく制限していました。農村の大量の余剰労働力が都市に流入するのを防ぐことが目的でした。このため農民が貧しい農村から出ることはできませんでした。
市場経済化で
八〇年代から市場経済化が進んで労働力も流動化し、出稼ぎ農民(農民工)が増加しました。都市に住んで働いているのに、医療保険に入れない、子どもが義務教育を受けられないなどの問題が発生。移住条件の緩和を含め、農民工の権利を保障する方向で段階的な改革が進められてきました。
中国共産党機関紙、人民日報十月二十五日付によると、浙江省嘉興市はこの十月から都市、農村戸籍の区別をなくしました。雲南省も今年一月から戸籍を統一。湖南省は全省で戸籍を一本化し、農村人口を都市部に吸収する方針を決めました。
十月に中国共産党第三回中央委員会総会が採択した「農村改革推進のための若干の重大問題に関する決定」は、中小都市で安定した職業に就いている出稼ぎ農民に都市戸籍を与えて権利を保護する方針を打ち出しました。
ただし、「決定」は二〇二〇年までの方針で、戸籍改革の目標時期は示されていません。
相当の財源が
問題は、戸籍制度を一本化しても医療保険や義務教育に関する都市部との差別はすぐになくならないことです。
医療保険も今は都市、農村で別だてになっており、受けられるサービスに格差があります。人口の半分以上を占める農民に都市住民と同水準の福祉を保障するには相当の財源が必要です。
人民日報は「戸籍が一元化されてもほかの面で二元化があるなら、実際の意義はない」とし、社会保障を含めて農民に平等な権利を保障する必要があると強調しました。