2008年10月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

グアム移転費負担

世界に例のない異常をやめよ


 防衛省は来年度予算概算要求で沖縄の米海兵隊八千人のグアム移転事業の着手をもりこんでいます。グアムと米太平洋軍の拠点であるハワイに防衛省職員を常駐させることも決めています。

 米政府は沖縄での新基地建設をグアム移転の条件にしています。しかし七割もの沖縄県民が反対しているため、計画は進んでいません。県民の反対を無視して、県民の頭越しで移転事業を強行するのは許されません。グアム移転費の負担を新基地建設と一体で進めることに国民が怒るのは当然です。

追加負担も含み残す

 グアム移転を沖縄の負担軽減のためのようにいう日本政府の説明は事実ではありません。もともとグアム基地の大規模建設は、ベトナム戦争が終わり休眠状態にあったグアム基地を、世界のどこにでも米軍を迅速に投入できる新たな戦略基地に変えるブッシュ政権の再編計画にもとづくものです。沖縄、ハワイと一体のグアム基地は、アジアと世界の平和を脅かす新たな元凶になるだけです。

 巨額を要するこの計画を一気に進める推進力になったのが、日本のグアム移転費です。二〇〇六年六月、米軍制服組トップのペース米統合参謀本部議長(当時)が、日本が「グアムに我々が駐留する機会をつくってくれた」とのべたことでも明らかです。

 他国の基地建設に税金を投入する国が世界にないことは政府答弁でも明らかです。基地の痛みをなくしてほしいという沖縄県民の悲痛な願いを逆手にとって、グアム基地建設の費用負担をすすんで請け負う日本政府の態度は、とうてい許せることではありません。

 しかも、米政府がグアム基地建設費の見積もり総額を引き上げたため、日本の負担が拡大するおそれもでてきています。

 日米両政府は〇六年五月の合意で、グアム基地建設費の総額を百二億七千万ドル、うち日本が六十億九千万ドル、アメリカが四十一億八千万ドルと決めています。それを米政府は総額を四十七億ドル増やし約百五十億ドルにするというのです。千人以上の米軍部隊と装備を一挙に戦場に送り込める高速艇の購入や施設の家具や事務用品、マリアナ諸島の訓練施設の整備など、このさい何でもそろえようという腹積もりです。米議会は増額に難色を示しているといわれます。米政府は日本の追加負担を当てにしているとみるのが自然です。

 問題は日本政府の態度です。浜田靖一防衛相は、「我々が提示した案と話がここでもう違っているわけでございますから、その意味では今後話し合いをしていくべき」だとのべました(二十日衆院テロ特別委員会、日本共産党の赤嶺政賢議員に対して)。移転費負担そのものが許されないというのに、追加負担を拒否するともいえないのはあまりにも卑屈です。こうした姿勢が米軍再編経費のつりあげを許してきた原因です。政府は深く反省すべきです。

思いやるべきは国民だ

 政府は、国民には財政難を理由に、社会保障費や教育費などを大きく減らし、苦痛を広げています。グアム移転費を含めた三兆円もの米軍再編経費が国民生活予算をいっそう圧迫するのは明白です。

 国民ではなく米軍を思いやる異常なアメリカいいなりの政治を変えることがいよいよ重要です。



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