2008年10月28日(火)「しんぶん赤旗」
主張
消費税増税プログラム
内需吹き飛ばす“自爆”政策
麻生太郎首相の指示で与党が消費税増税を含む税制改定の「中期プログラム」を検討しています。
麻生首相は総裁選でも「消費税は二〇一五年くらいに10%台にするのが流れだ」とのべるなど、消費税の大幅増税が持論です。
与党は今後三年間を「景気回復期間」として期限を切って減税を実施し、二〇一〇年代半ばまでに消費税率を二ケタ台に引き上げていく方針だと伝えられています。
一年限りの減税では
政府・与党が追加の経済対策として打ち出そうとしている減税は、証券優遇税制の延長・拡充、設備投資減税の追加など、大企業・大資産家向けが中心です。
所得税・住民税の定額減税は二兆円規模で一年間だけ実施するとしています。これでは、自公政府が「定率減税」の廃止で国民に押し付けた、年間三・三兆円の負担増の一年分さえ取り戻せません。
何より、一年限りと期限を切った減税は、翌年には減税分が元に戻る事実上の“増税”の反動が起こります。それを見越した多くの家計は、減税分を消費よりも貯金に回すため、内需を刺激する効果もあまり期待できません。
一九九九年に、それまでの単年度の定額減税をやめて「恒久的」な定率減税に切り替えたとき、政府は「一遍限りではない安心感」が生まれると説明しました。恒久的であるはずの定率減税を廃止した自公が、再び一時的な定額減税を持ち出すのは支離滅裂です。
すでにトヨタ、日産、三洋電機など日本を代表する大企業で、大量の派遣社員や期間社員の雇用を打ち切る動きが広がっています。大企業は景気悪化の影響を雇用とともに下請け中小企業にしわ寄せし、銀行は金融危機を口実にした「貸し渋り」「貸しはがし」で中小企業を痛めつけています。自ら大不況を招く大企業・大銀行の衝動に歯止めをかけなければ、日本経済は「全治三年」(麻生首相)どころでは済まなくなります。
消費税率の5%引き上げは十兆円を超える空前の大増税であり、一年限りの定額減税の何倍もの税金を吸い上げられることになります。国民の所得と消費の冷え込みがますます深刻になっているときに、たとえ三年後であっても、政府が消費税の増税計画を決めれば内需には凍りつくほどの衝撃を与えます。
アメリカ発の金融危機の影響は実体経済に及んでいます。外需の落ち込みはこれから本格化し、長期化する見通しです。日本経済は国内需要を立て直す以外に活路が見いだせないにもかかわらず、政府自身が内需を破壊する“自爆”の暴挙に出る―。これほどの愚策はありません。
有害無益な消費税頼み
政府の社会保障国民会議は消費税の大幅増税を促す試算を公表しています。政府・与党の消費税増税の口実は二十年前から社会保障の財源です。しかし、消費税の導入・増税と反比例して政府は連続で社会保障を改悪してきました。
税金には法人税も所得税も相続税もあります。この十年、財界・大資産家には、法人税減税や証券優遇税制などで年間七兆円分もの減税がふるまわれてきました。
低所得者ほど所得に対する負担が重い消費税は社会保障に最もふさわしくない税制であり、内需活性化に真っ向から反します。消費税一辺倒の議論は有害無益です。
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