2008年10月27日(月)「しんぶん赤旗」

主張

貸し渋り・貸しはがし

大銀行への厳しい指導こそ


 国内需要の冷え込みや原材料の高騰で苦しい経営を強いられている中小企業に、銀行の「貸し渋り」が追い打ちをかけています。

 米国発の金融危機を口実に銀行が融資の審査基準を引き上げ、とりわけ中小企業への融資姿勢を厳しくしています。民間の調査機関によると、融資を渋る「貸し渋り」、強引に融資を回収する「貸しはがし」によって倒産に追い込まれる中小企業が増えています。

 地域経済と雇用に打撃を与え、景気悪化を加速する貸し渋りは、直ちに是正する必要があります。

道理のない税金投入

 麻生内閣は、中小企業への融資を円滑にするとして、地域金融機関などに公的資金の注入を可能にする「金融機能強化法」改定案を国会に提出しています。

 小泉内閣が四年前、ことし三月までの時限立法としてつくった金融機能強化法の最大の目標は、金融機関の「収益性」「効率性」の向上です。収益性と効率性については数値目標を義務付けているのに、中小企業融資には数値目標を求めていません。まず金融機関に収益性と効率性、つまり利益最優先を求め、中小企業への貸し出しは二の次、三の次です。

 貸し渋りなど金融機関の身勝手な行動の根っこにあるのは、利益第一主義の経営姿勢にほかなりません。利益第一主義に拍車をかける法律は、中小企業への融資を増やすどころか貸し渋りを悪化させる危険さえあります。

 何より、乱脈な不動産融資や金融投機で抱えた損失の穴埋めに、何の責任もない国民の血税を投入することには道理のかけらもありません。

 金融庁は九月末、全国の商工会議所の経営指導員らに対する聞き取り調査の結果を公表しました。大銀行の中小企業への融資姿勢が「消極的」だと答えた割合は35%に上り、信金や信組(10・1%)の三・五倍に達しています。

 この結果を受けて、中川昭一金融相も、テレビ番組で「メガバンクが地方の中小企業からいっせいに融資を引き揚げており、要は『貸し渋り』だ」と認めました。

 問われているのは大銀行の姿勢です。

 政府は一九九八年以来の十年間に、十二兆四千億円もの公的資金を銀行に注入してきました。ところが日銀の調査によると、この間に銀行業界は中小企業向け融資を約二百五十兆円から百八十兆円に、三割も削っています。とくに大銀行は、血税による支援の最大の恩恵を受けて大もうけを上げながら、昨年一年間で中小企業向けの貸し出しを二・七兆円も減らしています。

「経済の血液」として

 金融は「経済の血液」です。血液が体内を回って絶えず栄養を補給し、命と健康を維持するように、産業の維持・発展に不可欠の公共的な役割を担っています。たとえ民間銀行であっても、金融機関が本来負っている公共的責任から逃れることはできません。

 政府が本当に貸し渋りをやめさせるつもりなら、大銀行に中小企業向けの貸し出し目標を設定させ、確実に達成させるために強力に指導すべきです。

 同時に信用保証制度による融資保証を「全額」から「八割」に後退させた制度改悪が貸し渋りを助長しています。早急に「全額」保証に戻すことが求められます。


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