2008年10月13日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

「無心」の難しさと爽快感

いつか、五輪に

パラリンピック2大会連続出場

アーチェリー選手 中西 彩さん(23)


 13日は体育の日です。先月、北京で開かれた障害者スポーツの祭典、パラリンピックに2大会連続で出場した、アーチェリー選手、中西彩(あや)さん(23)は、「いつかはオリンピックに」と夢を抱いています。(平井真帆)


 「結果的に個人で4位。悔しい思いもありますが、今の実力です」。北京パラリンピック閉幕から半月。さばさばした表情で語る彩さんは、惜しくもメダルは逃したものの、好成績を収めました。

それが“普通”

 現在、奈良県天理市の自宅に家族と暮らす彩さんは、先天的に脊椎(せきつい)の形に異常がある「二分脊椎症」という障害を持っています。

 生まれた直後から、手術・治療のくり返し。「育てていけるだろうか」と不安に駆られていた母親のみどりさん(55)に、彩さんの父親、康祐さん(57)は言いました。「足が悪くても、彩にとってはそれが“普通”。健康に生まれた子と同じように、病気にだけ気を付ければいいんや」

 気持ちが楽になったみどりさんは、「まず見てもらおう。知ってもらおう」と、彩さんを外にどんどん連れ歩きました。「彩が笑顔でいられる環境を」と、心を砕きました。

 どこでもニコニコと笑顔を振りまく彩さんは、近所の人気者になりました。

「かっこいい」

 中学2年生のころ、彩さんは将来への不安から家にこもりがちになっていました。

 「アーチェリー見に行かへん?」。ある日、康祐さんは彩さんを誘い出しました。

 アーチェリーは障害者と健常者が対等に競い合える数少ないスポーツです。上半身だけでできるアーチェリーなら、足が不自由な彩さんにも自信がつくのでは、と考えてのことでした。

 車いすでりりしく弓を引く女性選手の姿に、彩さんは「かっこいい」。その女性が、アトランタ・パラリンピックの金メダリストと知って、あこがれました。

 以来、現在に至るまで9年以上に及ぶアーチェリー人生が始まりました。

 アーチェリーは的に矢を射て、点数を競います。気持ちの乱れがすぐさま結果に表れ、メンタルの強さが求められるスポーツです。「無心」になる難しさと、当たったときの、爽快(そうかい)感が魅力、と彩さん。

 ロンドンを目指しますか? 「はい」と明るくうなずいた彩さんは言いました。

 「いつか、健常者と一緒に、オリンピックに」


競技費用「ほとんど自己負担」

 彩さんは、平日の月曜から金曜まで、大学で事務の仕事をしています。練習は、パラリンピック前でも夜間と土・日曜だけでした。

 彩さんを含め大多数の選手は、仕事の合間に練習を重ねているといいます。国内・海外遠征費用はもちろん、競技用車いすや介助者の費用などもほとんど自己負担です。

 日本パラリンピアンズ協会が6月に行った選手の意識調査では、「苦労する点」で選手の83%が「費用がかかる」と答えています。

 もともとはリハビリ目的で始まった障害者スポーツですが、近年は競技性が高まり、外国ではプロの選手も多くいます。

 日本国内の多くの選手は、「スタートの時点で同じ条件に立てていない」現状の改善を願っています。


お悩みHunter

高校生が「政治に関心」って変?

  私は政治や社会のことにとても関心があります。でも学校では、先生も自分の主張をはっきり言わないし、友達とも政治の話などできない雰囲気です。政治や社会のことなんて、私のような高校生が考えるのは、おかしいことなのでしょうか。(17歳 女子高生)

社会の主人公は私たちだから

  政治や社会のことを考えるのは、全然おかしなことではありませんよ。むしろあなたのような高校生が、政治や社会に関心を持っていることに、私はとてもうれしく思います。

 そもそも政治や社会の主人公は私たち国民ではないですか。私たちが政治や社会を考え、いいところや悪いところをよく見て、暮らしやすい社会をつくる、これが民主主義の社会のはずです。

 でも現実には政治や社会のことを語る人が少ないように思います。私が思うに、理由としては「身近に感じていない」「話題が楽しくない」というのがあると思います。

 まだ社会経験が少ない高校生ですと実感がわかないので、特にそう感じるかもしれません。「えっ! 何でそんなつまらない話するの?」みたいな感じですかね。

 それともうひとつ、政治や社会の話ほどさまざまな意見が出るものはありません。同じ意見を共有できることもあれば全く逆のこともあります。そのために、ときには摩擦を生むことだってあるでしょう。それで先生もはっきり言わないのかもしれません。

 でも何でも話せるような仲のいい友達には、ぜひとも話してほしいと思います。お互いの違った意見も理解し合えるだろうし、自分の考えもより深めることができると思います。大切な友達だからこそ一緒に考えていきたいものですね。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


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