2008年10月12日(日)「しんぶん赤旗」
学習指導要領の改定教科書にどう影響?
教師・編集者らシンポ
改定された学習指導要領が教科書の内容にどんな影響をあたえるのかをテーマに十一日、東京都内で「第十六回教科書を考えるシンポジウム」が開かれ、教師、教科書編集者、研究者ら約四十人が参加しました。子どもと教科書全国ネット21などが呼びかけたもの。
児童言語研究会の森慎さんは、文部科学省がつくった国語の新指導要領の解説書について報告。「言語活動」を重視するとして「報告する文章」を書くことや「依頼状、案内状、礼状」を書くことなどが具体的に例示されていることについて、「形式が先にありきで、子どもの現実を踏まえた授業はできない」と批判しました。また、新指導要領で小学生から古文・漢文などの「音読・暗唱」や「神話・伝承」が盛り込まれたことが、戦前の「愛国心教育」への回帰につながる危険性を指摘しました。
科学教育研究協議会の堀雅敏さんは、理科の新指導要領の解説書について、教える内容よりも「比較する」「表に整理する」といった「方法」が優先され、科学的な認識を育てるものになっていないことを例をあげて指摘。「知識」がなくても「実験したり調べたり」することさえできればいいという考え方だと批判しました。
理科の教科書編集者は、すべての教科で「道徳」教育を行うと定めた新指導要領の下で、理科の教科書でも「生命尊重」「自然環境の保全」などを「道徳」的に扱うよう求められる恐れがあることを報告しました。
討論では、さまざまな新学習指導要領の問題点が出され、その「縛り」を突破して、子どもにとっていい教科書をつくるために教師と編集者が知恵を出し合い、現場の実践を反映していくことの必要性が語られました。
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