2008年10月12日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「消された年金」

国家的な詐欺に猶予はない


 ずさんな記録管理で誰のものか分からなくなった「消えた年金」の解決のめども立たないうちに、厚生年金の「消された年金」問題が発覚しました。

 厚生労働省によると、保険料の基準である「標準報酬月額」(月給を三十の等級に分類)を大幅に改ざんしたと見られる記録が、延べ百四十四万件に上っています。

 これが氷山の一角にすぎないことは明らかです。

社保庁による改ざん

 厚生年金の保険料は労使折半です。労働者は「標準報酬月額」に応じた保険料を払ってきたのに、納付記録では低い等級に改ざんされ、本来よりも低い年金しか受け取れない―。

 総務省の「年金記録確認第三者委員会」が「改ざん認定」した年金受給者の中には、実際に年間二十五万円もの年金が「消された」被害が明るみに出ています。「消された年金」問題は、受け取れるはずの年金を故意に奪った極めて悪質な財産権の侵害です。

 舛添要一厚労相は、改ざんに社会保険庁の職員がかかわっていたことを認め、「組織的関与が極めて疑わしい」とのべています。社会保険事務所の徴収担当者だけでなく、係長、課長、所長ら管理職が改ざんを知っていたとする職員・元職員らの内部告発も出ています。「消された年金」は、まさに国家による詐欺事件です。

 厚労省が改ざんの可能性があると発表した件数は、「標準報酬月額」を六カ月以上さかのぼって引き下げたり、五等級以上も低く引き下げるなど極端なケースです。引き下げの期間が五カ月以内や引き下げ幅が四等級以下などの場合は除外しています。調査したのはコンピューターの記録だけで、一九八六年三月のオンライン化以前の台帳は調べてもいません。

 さらに重大なのは、厚生年金の加入期間を過去にさかのぼって短縮された被害を、調査の対象外にしていることです。第三者委員会が改ざんを認定したうちの七割がこのケースに当てはまります。加入期間を短縮された人が、それによって年金受給の資格そのものを失った恐れもあります。

 膨大な被害が水面下に隠されていることは明白です。麻生内閣・厚労省は実態のごまかしをやめて、国民の被害の全容を明らかにすべきです。

 問われているのは社会保障に対する政府の責任です。問題の根本には、国民の老後の生活保障である年金の受給権をないがしろにして、保険料の納付率アップを最優先にしてきた歴代政府、自公政府の姿勢があります。それは、社保庁長官に損保副社長を据え、納付率のノルマ競争を持ち込んで数十万件の不正処理を引き起こした、小泉・社保庁「改革」で浮き彫りになっています。

最後まで国の責任で

 年金、社会保障は憲法に明記された国民の権利です。政府はその権利を守るために存在しているという根本に立ち返り、行政に徹底することが必要です。

 国民に情報をきちんと提供するとともに、問い合わせや記録の訂正に迅速に対応できるよう体制を抜本的に強化すべきです。

 「消された年金」「消えた年金」の政府の責任を投げ出す社保庁の解体・民営化は中止し、最後の一人まで国の責任で解決するにふさわしい体制を取るよう求めます。



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