2008年10月9日(木)「しんぶん赤旗」

ノーベル物理学賞受賞

湯川博士以来の伝統生きる


 ノーベル物理学賞、日本人三人が同時受賞の報にびっくりし、感激しました。

 小林誠さん(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)と益川敏英さん(京都産業大学教授・京都大学名誉教授)は、いっしょに研究した「小林―益川理論」の業績なので、同時受賞は当然です。南部陽一郎さん(米シカゴ大学名誉教授)は、一九六〇年の業績ですから本人も周囲の関係者も、もっと早く受賞していてもよかったという思いが強かったようです。

 三氏はいずれも、素粒子物理学の理論的業績で受賞しました。素粒子物理学は物質世界の成り立ちを究明する科学です。

 日本人で初めてノーベル賞を受賞した(一九四九年)湯川秀樹博士(故人)、二人目の受賞者となった(一九六五年)朝永振一郎博士(故人)も素粒子の理論研究者でした。

 湯川博士のノーベル賞受賞は、素粒子物理学の研究に進もうという多くの科学者を生み出しました。南部陽一郎さんもその一人でした。

 小林さんと益川さんは、名古屋大学理学部で、湯川博士の研究を受け継いだ坂田昌一博士(故人)の研究室で素粒子物理学の研究を始めました。

 坂田研究室について益川さんは次のように語っています。

 「坂田研究室は、非常に自由な雰囲気でした。教官も、大学院生も、お互いに『○○さん』と呼び合うことになっていました。だれでもが思ったことを自由にいえるようにするための配慮がされていたと思います」(「しんぶん赤旗」二〇〇六年七月二十六日付)

 益川さんは七〇年に、小林さんは七二年に京都大学へ就職し、再会しました。七二年に、「小林―益川理論」を完成させています。

 三氏の受賞は、最も基礎的な科学の理論分野で、湯川博士以来の伝統が引き継がれていたことを示しました。

 湯川博士は、核兵器廃絶を掲げて平和運動にとりくんだことでも知られています。この精神も多くの素粒子物理学研究者に受け継がれました。益川さんは、国内の研究者が平和憲法を守ろうと二〇〇五年に結成した「九条科学者の会」の呼びかけ人に名前を連ねています。

 素粒子物理学の分野で、複数の研究者名で発表する研究論文は、研究者の役職などにかかわらずアルファベット順で記載することになっているといいます。

 こうしたよき伝統が引き継がれ、世界に誇れる科学者が後に続くことを期待したいと思います。(前田利夫)


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