2008年10月8日(水)「しんぶん赤旗」
アフガン戦争 7年の泥沼
市民も兵士も死者最悪
「交渉で和平を」強まる
二〇〇一年の米国のアフガニスタンに対する報復戦争開始から七日で七年がたちました。泥沼化した戦争のなかでも今年は民間人、外国軍兵士の死者ともに最悪の状況となっています。「対テロ戦争」強化の姿勢をとる米国に追随し、麻生政権はテロ特措法を続ける構えです。しかし、当のアフガン政府をはじめ、国際的には政治的解決を求める声が強まっています。(伴安弘)
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国連人権高等弁務官事務所(UNHCR)の九月の報告によると、アフガンでの民間人の死者は今年一―八月に千四百四十五人に上り、昨年同期比で39%増加しました。特に八月の死者は三百三十人で、開戦以来最大です。
一方、米主導のアフガン駐留多国籍軍の死者は九月末までに昨年を四人上回る二百三十六人。英医療調査会議(MRC)によると、アフガン駐留軍兵士の今年五―九月の死者は初めてイラク駐留軍の死者数を上回りました。アフガン多国籍軍は、イラク駐留軍の五分の一の規模です。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は九月二十八日、声明を発表。アフガンでの「治安関連の事件」が八月に九百八十三件発生し、昨年同期比で44%増と最高になったと述べ、「アフガン軍と国際治安部隊による軍事作戦の結果、民間人が殺害されている」と指摘しました。さらに、紛争に加え干ばつや食料価格高騰によって、人口の六分の一が食料不足に陥っていると指摘しました。
潘事務総長は、こうした治安、人権状況の悪化を放置するのでなく、「方向の転換が求められている」とし、「政治の大波」をもたらす必要があると強調しました。
米軍とともに多国籍軍の中核部隊を派遣する英国からも「対テロ戦争」自体を疑問視する声が上がっています。クーパーコールズ駐アフガン英大使は「米国の(アフガン)戦略は失敗の一途をたどっている」と述べ、「多国籍軍の存在が問題の一部」だと指摘したと伝えられます。
当事国アフガンのカルザイ大統領自身、交渉による和平の道を公然と明らかにしています。同大統領は九月三十日、反政府武装勢力タリバンの指導部に和平を呼びかけたこととともに、すでに七月にサウジアラビア国王に書簡を送り「アフガンに和平をもたらすよう援助」を求めてきたことを明らかにし、「交渉の準備が進んでいる」と語りました。
英仏独 世論は「撤退」過半数
米国は二〇〇一年の9・11対米同時多発テロへの報復としてアフガニスタンへの戦争を開始しました。いまも「不朽の自由作戦」の名で「対テロ戦争」を続けています。米軍とは別に北大西洋条約機構(NATO)が指揮を執る国際治安支援部隊(ISAF)がアフガンに駐留しています。
ISAFは、〇一年十二月に成立した国連主導の和平合意に基づいて、同月の国連安保理決議によって創設されました。その任務は当初、首都カブールとその周辺地域に限った治安維持でしたが、〇三年十月以来、徐々にアフガン全土にその任務を拡大。「不朽の自由作戦」の米軍の一部も参加し、現在では米軍とともに軍事作戦を実施しています。
多国籍軍には現在三十九カ国が参加しています。国連加盟国百九十二カ国の二割にしかすぎません。
しかも、その実質は米英軍とこれを補完する独仏伊、カナダなど一握りのNATO中枢国です。三十九カ国中、千人以上の兵員を派遣しているのは九カ国(23%)にすぎず、二百人未満の兵員しか派兵していない国が約半数の十八カ国となっています。
主要派兵国では「派兵反対」や「撤退」を求める世論が過半数を占めています。フランスでは62%が駐留に反対し、ドイツでも六月の調査で54%が撤退を要求。英国でも英兵の死者が百人に達した直後の調査で54%が「撤退」を求めました。
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