2008年10月8日(水)「しんぶん赤旗」
ノーベル物理学賞
南部・小林・益川氏が受賞
素粒子理論で
スウェーデン王立科学アカデミーは七日、二〇〇八年のノーベル物理学賞を、南部陽一郎・米シカゴ大学名誉教授、小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授、益川敏英・京都大学名誉教授の三氏に授与すると発表しました。
授賞理由は、素粒子物理学における対称性の破れの研究。南部氏は、一九六〇年に自発的対称性の破れに関する理論を提唱。この理論は、素粒子物理学の標準模型の基盤をなすものと評価されています。
小林、益川両氏は、南部氏の理論とは異なるCP対称性の破れに関する「小林・益川理論」を提唱。このなかで、素粒子クオークが六種類あることを予言しました。これまでに行われた実験でその存在が確かめられています。
日本人のノーベル物理学賞受賞は〇二年の小柴昌俊・東大名誉教授以来で合わせて五回目。化学賞や医学・生理学賞、文学賞などを含めると十三回目となります。複数の日本人の共同受賞は初めてです。
授賞式は十二月十日にストックホルムで行われ、賞金一千万スウェーデンクローナ(約一億四千万円)は南部氏に二分の一、小林、益川両氏に四分の一ずつ贈られます。
物質世界の成り立ち究明
受賞は当然、もっと早くてもよかった―。物質世界のなりたちを究明する素粒子物理学の理論的研究で先駆的な業績をあげてきた南部陽一郎、小林誠、益川敏英の各氏のノーベル物理学賞受賞は、関係者から待ち望まれていたものでした。
南部氏の受賞理由にあげられている「自発的対称性の破れ」の理論は一九六〇年という早い時期に定式化されました。この理論は、その後の素粒子物理学の発展の基盤をつくりました。
二〇〇四年のノーベル物理学賞は、素粒子クオークにかんする理論研究で米国の三人の研究者が受賞しましたが、南部氏はその解説資料で、アインシュタインや湯川秀樹博士らと並ぶ研究者として位置づけられていました。
小林氏と益川氏が一九七二年に完成させた「小林―益川理論」は、少なくとも六種類のクオークが存在することを予測しました。その理論で予測した六番目のクオークが九四年に実験で確認されました。より完全に実験で確認されたのが二〇〇二年、予測から三十年後でした。
六番目のクオークが実験で確認されてからは、小林氏と益川氏は毎年のようにノーベル賞の受賞が期待されていました。(前田利夫)