2008年10月7日(火)「しんぶん赤旗」
米空母火災 その時何が
海軍解禁事故報告書は語る
煙のにおい“問題なし”と上司
原子炉との位置関係分からず
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米海軍はこのほど、五月二十二日に原子力空母ジョージ・ワシントン艦内で発生した火災が「大火災」であったとする事故報告書を一部解禁しました。(本紙六日付既報)
日米両政府は米原子力艦船の「安全」性を繰り返し主張して、G・ワシントンの横須賀基地(神奈川県)配備を強行しました。報告書は、いつでも起こりうる人的ミスが「大火災」につながった経緯や、原子炉内への影響も生々しく記しています。
昨年も違反が
米海軍は七月末の報道発表で、「無許可の喫煙が、不適切に保管された可燃性液体に引火した」ことが火災の直接の原因だと公表しました。
今回の報告書によると、火災から一年以上前の二〇〇七年四月、技術部門の責任者が火元となった無人の「補助ボイラー排気・供給区画」で、大量の可燃性液体が規則に反して保管されていたことを発見。定例会議で報告しましたが、ダイコフ艦長(当時。今年七月末に解任)は何の措置もとらなかったばかりか、報告自体を失念しました。
命令は40分後
「横須賀配備にあたり、二つの重大な脅威がある」。今年一月十九日、ダイコフ艦長は各部局責任者に電子メールで、対テロおよび通常の戦闘下における部隊や艦の防護に「弱点」があると警告しました。
三月の試験では、火災や浸水、爆撃による被害を最小限に抑える「ダメージ・コントロール(DC)」=被害管理の分野で問題が指摘されましたが、改善措置はとられませんでした。
この弱点は五月二十二日の火災で露見しました。同日午前六時、乗組員の一人が煙のにおいを感知したものの、上司は問題なしと判断。同七時四十分ごろ、複数の個所で白煙や黒煙が発見されました。「総員配置」命令が出たのは、それから四十分後の八時二十分でした。
火災の間、原子炉はどのような状態だったのか。報告書は、火元となった「補助ボイラー排気・供給区画」の位置を示した図を明らかにしていないため、正確な位置関係は分かりません。
原子炉の担当将校は、午前八時二十五分、電気設備の電流に振幅があったことを報告しています。
さらに同十時、補助ボイラー室で火災が発生したようだと気づきましたが、原子炉との距離を知らなかったと述べています。
米太平洋艦隊のウィラード司令官は、ダイコフ艦長らの責任を厳しく追及した上で、「G・ワシントンは、前方展開基地(横須賀)への移転に関する複雑な相次ぐ行事にかかわっており、艦長の肩に多くの重要事項があった」と述べています。
横須賀配備に伴う多忙さが、艦長の指導力欠如の一因になったとの見方です。(竹下岳)
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