2008年10月6日(月)「しんぶん赤旗」
マスメディア時評
対立軸を隠す「朝日」の不見識
麻生太郎内閣が発足し、衆院の解散・総選挙が近づくなかで、テレビだけでなく新聞でも、「自民か、民主か」をあおる報道が目立ってきました。なかでも民主党機関紙になったのかと疑わせる「朝日」の異常な報道ぶりが目につきます。
報道の責任投げ捨てる
一日から始まった代表質問の初日、「朝日」はまず同日付夕刊で、民主党の小沢一郎代表の質問を、「小沢氏が『所信』表明 首相の逆質問に答えず」と報じました。しかもそれにとどまらず、翌日付朝刊でも「焦点採録」と称してほぼ一ページを費やして小沢代表の質問大要と、鳩山由紀夫幹事長の質問内容をくわしく紹介するという念の入れようです。
ところが、民主党以外の各党も質問に立った二日以降の報道ではニュースだけになり、三日付、四日付朝刊では「焦点採録」そのものがなくなります。ニュースでも、三日の参院本会議での日本共産党の市田忠義書記局長の質問には一行もふれていない(四日付朝刊)のですから、「朝日」の報道が著しく公平さを欠くのは明らかです。
読者に事実を伝え、正確な判断が下せるようにするのは報道機関としての責任です。とりわけ選挙を目前とした報道では公正さが求められます。「朝日」の報道は、この報道機関としての責任を投げ捨てたものというほかありません。
いま求められる対立軸は
加えて異常だったのは、二日付の社説です。「朝日」は、小沢氏の代表質問を取り上げ、「対立軸が浮かんできた」と論じました。
小沢氏の代表質問には、官僚支配への批判はありますが、異常な大企業中心主義やアメリカのいいなりという、いまの日本の政治悪への批判はありません。
小沢氏は「税金の使い方を根本的に変える」といいながら、軍事費の削減も、大企業・大資産家に応分の負担も要求しません。「日米同盟の維持・発展」を第一とする点では、麻生首相と同じです。これでは自公政治への「対立軸」にはなりえません。
日本共産党は、「二つの政治悪」を正し、「国民が主人公」の日本へと、政治の中身を変えることを主張しています。
この主張を含めて、民主以外の党の代表質問の中身を黙殺しながら、小沢氏の代表質問だけを取り上げて「対立軸が浮かんできた」などと持ち上げるのは、日本の政治にいまもっとも求められる本当の対立軸を覆い隠すことにしかなりません。(宮坂一男)