2008年10月6日(月)「しんぶん赤旗」

主張

宇宙の軍事利用

海外で戦争する備えをやめよ


 軍事衛星の保有・利用に道を開く宇宙基本法(八月二十七日施行)の具体化に向けた政府・防衛省の動きが、本格化しています。

 政府の宇宙開発戦略本部は一日専門調査会の初会合を開き、防衛省もすでに宇宙開発利用推進委員会を始動させています。防衛省は、検討結果を次期「防衛計画の大綱」の見直しと中期防衛力整備計画の策定に反映するとしています。宇宙の軍事利用によって、日本はアメリカとともに海外で戦争できる能力を高めることになります。宇宙基本法を強行した自公民三党の責任は重大です。

日米軍事一体化の促進

 宇宙基本法は、「非軍事」の原則に反して、偵察衛星、早期警戒衛星、軍事通信衛星などの保有・利用に道を開くものです。国会決議(一九六九年)で明記した「平和の目的に限り」を捨て、軍事利用を進めるのは、戦争を放棄した憲法九条の精神に明確に反します。

 法律は、「国際社会の平和及び安全の確保」を目的にうたい、自衛隊の海外活動のために軍事衛星を使うことを認めています。法案を準備した自民党の「日本の安全保障に関する宇宙利用を考える会」は、宇宙利用はイラクやインド洋で行っているような「自衛隊の海外活動を支える」ためといっています(二〇〇六年八月)。そのために「防衛専用通信衛星の保有が不可欠」とし、地上物体の解像精度が高い偵察衛星を独自に「開発する」といっています。イラクのような海外の広大な戦場で、迅速に移動し軍事作戦を実施するために、GPSのような航法衛星や通信衛星、偵察衛星をもつというのです。

 衛星を利用した自衛隊の作戦能力の強化が、アフガニスタンでもイラクでも軍事衛星を使って無差別殺りく戦争を進めているような米軍との軍事一体化をさらに強めさせることになるのは明らかです。後方支援にとどまらず戦場でもっと大きな役割を果たせというアメリカの要求に拍車をかけさせることにもなりかねません。

 見過ごせないのは防衛省が来年度予算の概算要求で計上した「偵察用小型無人機」の導入です。無人機は航法衛星や偵察衛星が不可欠な兵器です。米軍はアフガニスタンやイラクで、米兵の犠牲をだすことなく地上攻撃するために使っています。軍事衛星の保有・利用を決めたとたんに、無人機の導入にふみきるのは、後方支援だけでなく危険な分野も分担せよというアメリカの要求にこたえようとする意思のあらわれです。

 宇宙の軍事利用が宇宙科学や技術の成果を秘密のベールにつつむ危険も重大です。安全保障と大規模災害のためとする情報収集衛星ですら、自衛隊が利用しているという理由でいっさい秘密です。

 この点でも宇宙利用の「自主・民主・公開」の原則を崩す動きに反対していくことが重要です。

やめさせるしかない

 宇宙の軍事利用は、日米軍事同盟の侵略的強化を狙うアメリカの要求と、宇宙利用で大もうけするため「宇宙産業の競争力強化の必要性」(日本経団連)を強調する財界・軍事産業の要求にこたえたものです。巨額の予算を伴う宇宙の軍事利用が国民生活予算を圧迫していくことも避けられません。

 海外での戦争に備え、国民負担を増やす宇宙の軍事利用は、やめさせるしか道はありません。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp