2008年10月5日(日)「しんぶん赤旗」
主張
景気悪化
カンフル剤では解決しない
アメリカ発の国際的な金融危機がますます深刻になり、アメリカをはじめとする海外の需要に頼って成長を図ってきた日本経済も大きな影響を受けています。
景気がいっそう悪化していることは、日本銀行が一日に発表した二つの調査にもくっきりと表れています。
生活と営業の危機
日銀の九月の生活意識調査によると、81%の人が景気は「悪くなった」と答えています。「ゆとりがなくなってきた」人は65・2%に上ります。所得の低迷が長引いているところに、投機マネーの流入による石油や食料品など物価の高騰が襲って、生活と営業に大きな打撃を与えています。
同じく日銀の九月「短観調査」によると、中小企業だけでなく大企業の中でも景気が悪いと感じる会社が急ピッチで増えています。内需が一段と冷え込むと同時に、プラスだった海外需要もマイナスに転じたという調査結果です。
景気は波のように良くなったり悪くなったりを繰り返します。しかし最近の日本経済は、トヨタやキヤノンなど大企業が過去最高の利益を上げ、経済が成長しても、国民は不景気のトンネルから抜け出せなくなっています。景気の波が上向いても経済の六割を占める家計は水没したままという、世界でも異常な資本主義です。
経済成長には大企業の国際競争力の強化が一番重要だとする財界の身勝手な主張に従い、国民を犠牲にして大企業の大もうけを応援してきた自公政治の結果です。若者に非人間的な働き方を押し付けて大企業の利益追求に奉仕し、生活が苦しくても庶民は増税、大企業は空前の利益なのに減税という逆立ちした政治の帰結です。
暮らしが危機に陥ったときに支えとなるべき社会保障は、毎年二千二百億円もカットする連続削減でぼろぼろになっています。物価が上がっても年金を増やさず目減りさせる年金改悪、高齢者をいじめ、医療を崩壊させた医療改悪、申請書も渡さない生活保護の抑制、保険あって介護なし―。社会保障が暮らしの支えどころか不安の種になる本末転倒の政治も、号令をかけたのは日本経団連です。
財界の指図で政府・与党が進めた「構造改革」路線は、日本経済を極端な「外需・輸出頼み、内需・家計ないがしろ」の体質にしてしまいました。アメリカ経済の暗転によるショックに、日本経済が、これほど深刻な影響を受けているのはこのためです。
麻生内閣が国会に提出した補正予算案は、すぐに政府・与党から二次補正の議論が出るほど実効性のない内容です。政府・与党が二次補正として追加しようとしている対策の切り札は「定額減税」ですが、一時的な対策では暮らしの不安は少しも軽くなりません。
土台から体質改善を
「構造改革」路線と「外需頼み・内需ないがしろ」の体質をそのままにしておいて、いくら「カンフル剤」を打ち、「ばらまき」をやっても効果は上がりません。
大企業のもうけを最優先にした政治を根本から転換し、雇用、社会保障、農業や中小企業を立て直し、国民の生活を応援することによって、土台から経済の体質を改善することが求められます。それこそ重大な局面を迎えている経済危機を打開する大道です。