2008年10月4日(土)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が三日、参院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。


写真

(写真)代表質問をする市田忠義書記局長=3日、参院本会議

 私は、日本共産党を代表して、麻生首相に質問します。

 総理は所信表明の中で、「国民の暮らしから不安をとりのぞく」といわれました。しかし、社会保障や雇用、食の安全と農業など、国民の暮らしの不安は自公政権がつくりだしたものばかりであり、あなたは閣僚や自民党幹事長として、それに重大な責任を負っているのではありませんか。まず求められるのは、そのことへの反省であることを指摘し、以下、具体的にお聞きします。

後期高齢者医療制度――国民を不安に陥れた制度は速やかに廃止せよ

 お年寄りを、そして将来老齢をむかえるすべての国民を不安に陥れたのが後期高齢者医療制度であります。総理は見直しに言及されましたが、あくまでも制度の存続が前提になっています。

 国民はなぜ後期高齢者医療制度にこれほど憤慨しているのか。説明不足だからではありません。それは、説明すればするほど、この制度の目的が、七十五歳以上になると、(1)いくつもの病院にかかり治療が長期化する、(2)認知症になる人が多い、(3)いずれ避けることのできない死を迎える。だから国の医療費を減らすために、七十五歳以上の人を別建ての制度に囲い込む。そして全員から保険料を、しかも、有無をいわさず年金から天引きし、差別医療を押しつける。これが本質だということがはっきりしてきたからです。三度目の保険料の天引きは、八月十五日、よりによって終戦記念日でした。

 七十五歳以上の高齢者といえば、先の戦争のときには、「命を差し出せ」と言われました。そして戦後の復興のために力を尽くし、苦労して、ようやく七十五歳を迎えたら、今度は「早く死ね」と言わんばかりの仕打ち。「あなたは今日から七十五歳。長い間ご苦労さまでした。今日からはせめて医療費だけは心配かけません」――これが本来の政治のあり方ではありませんか。後期高齢者医療制度は速やかに廃止し、国民の声に謙虚に耳を傾けて、あるべき医療制度を再構築することを求めます。

最低賃金・派遣制度――全国一律千円へ時給を引き上げ期限付き雇用は原則禁止を

 総理は、最低賃金の引き上げと労働者派遣制度の見直しに言及されました。それならば、ほとんどの労働団体が一致して要求している、最低賃金を全国一律千円に引き上げる意思を示していただきたい。労働者派遣制度のどこをどう見直されるのか。日雇い派遣の禁止、登録型派遣の原則禁止など、少なくとも一九九九年の原則自由化以前の状態に戻せというのが、これまた関係者ほとんどの総意ですが、そこまで踏み込む決意はおありですか。

 いま日本を代表する大手製造業で、違法派遣の摘発をうけ直接雇用への転換を余儀なくされるところが生まれています。しかし、その実態は、雇用期間三カ月とか数カ月、契約を更新しても最長二年十一カ月、それを過ぎると雇い止めであります。

 人はこの世に生を受けたのち親や社会にはぐくまれ、おとなになって仕事につきます。そして、結婚、子育て、社会活動などさまざまな体験を経ながら、両親をみとり、自らも老いていくという長い人生をおくります。けっして、三カ月や数カ月単位、最長二年十一カ月単位で人生を送るのではありません。ところが日雇い派遣なら一日ごとの、期間社員なら最長でも二年十一カ月だけの人生しか見通せなくなる。これほど不安な人生はありません。しかも、企業、工場は決してそんな単位で操業してはいないのにであります。

 総理は、国民にもたらされる不安を「実に忌むべき」といい、「これら不安を我が事として一日も早く解消する」と宣言されました。ならば、不安な人生を強制する、派遣や期間社員などの細切れ雇用の蔓延(まんえん)はそれこそ一日も早く解消すべきであります。そのためにも、派遣法の抜本的改正はもとより、二〇〇四年労働基準法改悪で導入された「三年有期雇用の一般化」を見直し、合理的な理由がある特別の場合以外の期限付き雇用は禁止すべきではありませんか。

食への不安――ミニマムアクセス米の輸入を中止し、米流通の管理責任を果たせ

 食への不安が国民を覆っています。

 汚染米と知りつつ流通させた業者。それを見逃した農水省の行政にももちろん重大な責任があります。同時に、この問題の根本になにがあるのか。

 汚染米の八割は輸入米です。政府がミニマムアクセス米として輸入した七十七万トンの一部です。どうしてカビや農薬で汚染された米を、廃棄したり、輸出国に送り返すことなく国内で流通させたのか。それは流通させなければ七十七万トンを輸入したことにならないからであります。だから、糊(のり)の原料など工業用としての国内需要量を上回って、残りは食用に回るかもしれないことがわかっていても、引き取ってくれるところがあれば、引き渡していたというのが実態であります。WTO(世界貿易機関)協定上、ミニマムアクセス米の輸入は義務付けられてはいません。日本には世界に誇る米があります。国内では減反を押しつけながら、アメリカに義理立てして輸入を続けることはもうやめるべきではありませんか。

 いまひとつは、米を売買する業者、かつては許可制だったものを、小泉「改革」で届け出さえすれば誰でもできるようにしたことであります。いわゆる規制緩和で流通を市場任せにして、政府の責任を放棄した。この二つが重なって発生したのが今度の問題であります。政府はこの失政を認め、ミニマムアクセス米の輸入を中止し、米の流通の管理責任を果たすべきであります。

 食料自給率の向上は、汚染米の教訓からも切実な課題であります。主な農産物の価格保障を基本に、所得補償を組み合わせて再生産を保障すること、規模の大小で農家を選別するやり方をやめること、農産物の無制限な輸入自由化はやめること、これらが、自給率を回復した国々に共通する教訓でもあります。「農業を保護の対象からはずす」ことをうたう総理の方針は、亡国農政そのものといわなければなりません。

 日本農業再生の合言葉は、「安全な食料を日本の大地から」であるべきであります。

アフガン問題――アメリカの報復戦争への協力でなく政治的解決に力つくせ

 総理が就任後最初におこなったこと、それは、国連に行って、アフガニスタンで米軍などが進めている報復戦争を応援する。そのために、何としても新テロ特措法を延長するという態度表明でした。

 しかし戦争や武力ではテロはなくなりません。それどころか、アフガンの治安はかつてないほど悪化しました。

 アメリカの国防総省とも深いかかわりのあるシンクタンク、「ランド研究所」は、軍事力による「テロとのたたかい」は逆効果だった、という報告書を発表しました。テロ活動が終わった経験を歴史的に分析すると、最も多いのが政治解決で43%、「警察などによる取り締まり」が40%、軍事力でテロ組織を壊滅に追い込んだケースは、わずか7%にすぎなかったことをあげ、軍事力による「対テロ戦争よりも、警察活動などに重点をおいたテロ対策こそが有効だ」としています。

 日本共産党は9・11テロが発生したときに、軍事力でなく国連を中心として、警察力による逮捕と法にもとづく処罰こそがテロ根絶への道だと、世界の首脳に文書を届けて訴えました。いまその方向こそが、テロの解決になるという見方が世界で多数の意見になりつつあります。

 アメリカの報復戦争に協力しないと「国際的に孤立する」などという政府の立場こそ、世界から孤立しているといわなければなりません。平和なアフガンのためには、自衛隊の派兵をやめ、アメリカの報復戦争への協力ではなく、政治的な解決のため力を尽くすべきではありませんか。

 以上、答弁を求めて質問を終わります。


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